『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』レビュー:中つ国への見事な帰還
12月27日公開、『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚
ピーター・ジャクソン監督による壮大な実写3部作の183年前、ローハンを舞台とする新作アニメ映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』。ナレーションは、実写版でエオウィンを演じたミランダ・オットーが務めており、3部作と新たなアニメ前日譚をつなぐ接着剤のような役割を果たしている。また本作は、2026年公開予定の実写映画『Lord of the Rings: The Hunt for Gollum(原題)』の前菜的な役割も担っている。よって、アニメという形式をとった本作は、筋金入りのファンにも初心者にも同じくらい魅力的なものでなければならない。
『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』あらすじ
「ローハンの戦い」は、J・R・R・トールキンの『指輪物語』の追補編、特にローハンの統治者たちの歴史を描いた部分に基づいている。物語の中心となるのは、ローハンのヘルム王の娘・ヘラ。しかし王国の状況は、敵対勢力・ダンレンディングのリーダーであるフレカの息子ウルフがヘラに求婚し、彼女が全く興味を示さないことで悪化していく。騒動の中、短気なヘルムがフレカを殺してしまうと、ウルフを追放する。
復讐を誓ったウルフは、軍勢を集めてローハン征服を目指す。一方ヘラは、ダンレンディングによる侵略に対する抵抗勢力の指導者としての役割を果たすことに。そして物語は、後にヘルム峡谷として知られる巨大な要塞での壮大な戦いへ発展する。
神山健治監督による圧巻のビジュアル
物語展開は概ね形式的で、メロドラマ的な台詞もそれほど良くない。キャラクターの描写も同様に単純で、ウルフはまさに典型的な悪役だ。この点で『ロード・オブ・ザ・リング』3部作とは異なり、本作の登場人物は唯一の例外を除いて人間に限られている。
しかし、この作品においてより重要なのはストーリーではなく、ビジュアルである。『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズなどで知られる神山健治監督は、さまざまなスタイルの2D、3Dアニメーションを巧みに組み合わせ、パフォーマンスキャプチャー、手描き、CGなどを駆使している。その結果生まれた絵画的な映像は、ジャクソン監督の映画で描かれた世界に少なからず似通っている。特に戦闘シーンの描写は驚くほど見事であり、可能な限り大きなプレミアムスクリーンやラージフォーマットスクリーンで鑑賞することで、その迫力を最大限に味わえるだろう。
新旧ファンが楽しめる作品
ファンにとっては、歴代作品へのオマージュが嬉しい要素となるだろう。ハワード・ショアによるオリジナルテーマを取り入れた部分や、後半でのガンダルフへの言及などがその例だ。しかし、トールキンの細かい設定に詳しくない観客であっても、「ローハンの戦い」を視覚的に壮大で神話的な物語として楽しむことができるだろう。134分という上映時間は、やや長く感じられるかもしれないが、本作は単独でも十分に魅力的である。
また、本作のクリエイターの多くがジャクソン監督の3部作に携わった経験を持つことは、この補完的な作品が慎重かつ愛情を込めて制作されたことをさらに示している。
『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』
公開日: 2024年12月27日
キャスト: 市村正親/ブライアン・コックス、小芝風花/ガイア・ワイズ、津田健次郎/ルーク・パスクァリーノ、本田貴子/ロレイン・アシュボーン、入野自由/ヤズダン・カフォーリ、森川智之/ベンジャミン・ウィンライト、中村悠一/ローレンス・ウボング・ウィリアムズ、斧アツシ/ショーン・ドゥーリー、山寺宏一/マイケル・ワイルドマン、田谷隼/ビラル・ハスナ、坂本真綾/ミランダ・オットー
監督: 神山健治
脚本: フィービー・ギッティンズ、アーティ・パパイョルイウ
上映時間: 2時間14分
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌
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