『クィア・アイ』生みの親、LGBTQ作品減少に危機感「テレビは人間性を映すべき」
『クィア・アイ』シリーズの共同制作者であり、制作会社スカウト・プロダクションズの創設者として知られるデヴィッド・コリンズ氏が、ハリウッドにおけるLGBTQIA+作品の減少傾向に強い危機感を示した。コリンズ氏は、「テレビが人間性の多様さを映し出さなくなれば、社会全体がその代償を払うことになる」と訴えている。
『クィア・アイ』が示した「共感」の力
コリンズ氏は25年前、5人のゲイ男性を中心に据えたリアリティ番組『クイア・アイ♂♀ ゲイ5のダサ男改造計画』を企画。当時は「ニッチな企画」と見なされていたが、2003年にBravoで放送が始まると世界的なヒットを記録した。その後、Netflix版『クィア・アイ』として復活し、シリーズ累計200話以上が制作されている。
同氏は、この作品が成功した理由について、「人々が求めていたのは“ゲイ向け番組”ではなく、人間らしさそのものだった」と振り返る。
「笑い、変化、希望、そして共感。人々は、自分とは異なる人生を歩む人々もまた、自分たちと同じように“つながり”を求めていることを知りたかったのです」と語った。
『クィア・アイ』は、ゲイ男性をステレオタイプではなく、専門家や隣人、友人として描き、多くの視聴者の価値観に影響を与えた作品として評価されている。
LGBTQIA+コミュニティを描いた作品群
コリンズ氏率いるスカウト・プロダクションズは、その後も多様なコミュニティに光を当てる作品を制作し続けている。
特にHBO Maxのダンス・コンペティション番組『レジェンダリー(原題:Legendary)』は、ブラックおよびラテン系のLGBTQIA+コミュニティが長年築いてきたボールルーム文化を、世界中の視聴者に紹介した作品として知られる。
ボールルーム文化とは、選ばれた家族である「ハウス」が競い合い、ヴォーギングやファッション、パフォーマンスを披露する独自のカルチャーだ。コリンズ氏は、「周縁化されてきた人々が、自らの家族を築き上げた歴史そのものだった」と説明している。
また、『スウェーデンの死の片付け』では、思いやりに満ちたゲイ男性が番組の中心的存在として描かれ、『ザ・ハイプ(原題:The Hype)』ではストリートファッション文化を、『OMG ファッション(原題:OMG Fashun)』ではファッション界の革新性と創造性を称えてきた。
コリンズ氏は、「これらは“ゲイ作品”ではなく、優れた作品だった」と強調した。
ハリウッドで進むLGBTQ作品の減少
一方で、近年のハリウッドでは、LGBTQIA+作品を取り巻く状況が大きく変化しているという。
ストリーミング業界の再編が進み、スタジオ各社がリスク回避を重視するなか、特定のコミュニティに根差した作品が企画段階で敬遠されるケースが増えていると指摘。作品の評価基準が「優れた作品かどうか」から、「世界市場で安全に売れるかどうか」へと変化していると分析した。
LGBTQ支援団体GLAADが発表した最新の調査によると、テレビおよび配信作品に登場するLGBTQキャラクター数は、2022年以降23%減少していると報告されている。
コリンズ氏は、「恐怖は声高に宣言されるものではない。作られなくなった作品の中に、その姿が現れる」と警鐘を鳴らした。
『レジェンダリー』消滅に抱く強い喪失感
コリンズ氏が特に残念だと語るのが、『レジェンダリー』の現状だ。
同作は、ボールルーム文化を真正面から取り上げた初の大規模番組のひとつであり、高い評価と人気を獲得していた。しかし、HBO Maxのコンテンツ再編に伴い、全3シーズンが配信停止となり、現在では視聴が極めて困難な状況となっている。
「私たちはボールルーム文化を借用したのではなく、その文化を築いた人々にマイクを渡したかった」とコリンズ氏は説明する。
現在もボールルーム文化は、音楽、ファッション、ダンスなど幅広い分野に影響を与え続けている。歌手のレディー・ガガやラッパーのドーチーらの表現にも、その系譜を見ることができると同氏は指摘した。
「人間性の全体像」を描くことの重要性
コリンズ氏は、LGBTQIA+コミュニティの物語が必要とされる理由について、「これは単なる多様性の問題ではなく、想像力の問題だ」と語る。
「テレビが人間性の全体像を映し出さなくなれば、誰もが何かを失います。若いクィアの人々は自分自身を見る機会を失い、多数派の視聴者は自分とは異なる人生を理解する機会を失うのです」
さらに、「私は長年、エンターテインメントは議論よりも早く人の心を変えると信じてきた」と強調。笑い、変身、ダンス、そして人生の物語こそが、偏見を乗り越え、人々を結び付ける力を持っていると訴えた。
そして最後に、「観客は次世代のストーリーテラーを受け入れる準備ができている。ハリウッドに必要なのは、彼らにカメラを渡すことだけだ」と呼びかけている。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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