ホーム » NEWS » フランク・ミラー、ジム・シューターとの衝突を語る

フランク・ミラー、マーベル時代を回顧 ジム・シューターとの衝突、幻の『ドクター・ストレンジ』を語る

/ /
フランク・ミラー、マーベル時代を回顧 ジム・シューターとの衝突、幻の『ドクター・ストレンジ』を語る
フランク・ミラー 写真:Yvonne Bennett
スポンサーリンク

『ダークナイト・リターンズ』『シン・シティ』などで知られる漫画家・作家フランク・ミラーが、マーベル時代に関わったジム・シューターとの関係や、実現しなかった『ドクター・ストレンジ』シリーズ、そして今後の『シン・シティ』について語った。回顧録の出版やドキュメンタリーのデジタル配信など、多忙な夏を過ごす69歳のミラーは、創作活動を続ける意欲を明かしている。

フランク・ミラー、回顧録で明かす「ニール・アダムスから受け継いだ創作哲学」

ミラーは現在、自身の回顧録と創作論を兼ねた著書『プッシュ・ザ・ウォール:マイ・ライフ、ライティング、ドローイング、アンド・ザ・アート・オブ・ストーリーテリング(原題:Push the Wall: My Life, Writing, Drawing, and the Art of Storytelling)』を携え、各地を巡るブックツアーを行っている。同書は2026年7月に刊行され、『バットマン:ダークナイト・リターンズ』『デアデビル』『300』『シン・シティ』などを生み出してきた自身のキャリアと創作について綴った一冊だ。

ミラーが同書を執筆した背景には、若き日に出会った漫画家ニール・アダムスの存在がある。

キャリアのスタート地点となったのは、当時、コミック界を代表するアーティストだったアダムスの事務所を電話帳で見つけ、直接電話をかけたことだった。面会したアダムスから自身の絵を「ひどい」と評されたミラーは、描き直しては何度も彼のもとを訪問。その厳しい指導を受けながら、やがてアダムスの紹介で最初の仕事を得たという。

アダムスは技術だけでなく、プロとしての振る舞いや、アーティストとして社会の中で生きていくための姿勢もミラーに教えた。

後年、ミラーが「これまでしてもらったことに、どう感謝すればいいのか」と尋ねたところ、アダムスは「次の人にも同じことをすればいい」と答えたという。

ミラーは「この本は、次の人に同じことをするための試み」と説明。自身の経験や観察、コミック制作を通じて学んだことを、次世代に伝えることが執筆の目的だったと明かした。

ジム・シューターとは「良い議論ができた」

マーベル・コミックス時代にミラーと関わった人物として、編集長を務めたジム・シューターも挙げられる。シューターは若くしてマーベルの編集長に就任し、1980年代の同社を率いたことで知られる。

ミラーによれば、シューターはコミックにおける「ストーリーテリング」を非常に重視していた。当時のマーベルにはさまざまなクリエイターが存在し、作風も方向性も多岐にわたっていたが、シューターはそれらをまとめ上げ、「マーベル・ユニバース」という概念をより強固なものにしようとしていたという。

ミラー自身はシューターについて、「彼は変化を望み、私は学ぶことを望んでいた」と振り返る。一方で、2人とも強い意見を持っていたため、衝突することもあった。

「うまくいった理由の1つは、2人とも良い議論をすることを楽しんでいたからだと思う。議論は、とてもクリエイティブで良いものになり得る」とミラーは語っている。

マーベルを「辞めた」のではなく、自由を求めて移った

ミラーは1980年代、『デアデビル』で大きな成功を収めた後、マーベルを離れたことで大きな注目を集めた。その後、再び同社で『デアデビル:ボーン・アゲイン』を手がけている。

ただし、本人は「マーベルを辞めた」という表現には異議を唱える。

「マーベルを辞めたわけではない。自分が望んでいた自由を、より認めてくれる出版社でプロジェクトを手がけることを選んだ」

ミラーにとって重要だったのは、クリエイターの才能は出版社に縛られるものではないという考えだ。

「出版社が自分の作品を出しているからといって、軍事組織への忠誠を誓っているわけではない。結婚でもない」と説明した。

『ボーン・アゲイン』後には、ウォルター・サイモンソンと組んだ『デアデビル』の新作も構想されていた。長年実現していないこの企画について尋ねられると、ミラーは「なぜ実現しないと思う?」と笑いながら答えている。

『ドクター・ストレンジ』幻のシリーズが実現しなかった理由

マーベル時代には、脚本家ロジャー・スターンと組んで『ドクター・ストレンジ』の新シリーズを手がける計画もあった。実際に予告広告まで掲載されたものの、ミラーが本編を担当することはなく、企画は実現しなかった。

その理由についてミラーは、自分自身の作品を書き、描くことへの思いが強くなったからだと説明する。

「自分自身の作品を書きたくて仕方がなかった。もう待っていられなかった。自分でコミックを書いて描き始め、単なるイラストレーターではなく漫画家になりたかった」

その後、ミラーは『ダークナイト・リターンズ』や『バットマン:イヤーワン』などを手がけ、コミック界を代表するクリエイターへと飛躍していった。

『シン・シティ』は「人生の仕事」 新作にも意欲

ミラーは現在も創作活動を続けており、特に『シン・シティ』については「何よりも、自分の人生の仕事」と位置づけている。

現在は、『シン・シティ』の新作が進行中。ミラー自身が手がける西部劇作品に加え、ミロ・マナラが作画を担当する別の『シン・シティ』作品も予定されている。ミラーによれば、自身の中には新たな『シン・シティ』のアイデアが「12個」ほどあるという。

マナラの作業も順調に進んでいるといい、ミラーは冗談交じりに「彼には女の子の描き方を教えなきゃいけない」と話した。

また、新作『インヴェイシヴ・スピーシーズ(原題:Invasive Species)』ではダークホースと再びタッグを組む。ダークホースとの関係については「良く、強いものだった」とし、同社の現在の方針も自身の考えに近く、作品を届けるための体制も整っていることから、引き続き同社から刊行することを決めたと説明した。

ミラーは現在のコミック界についても、「今も非常に多様な作品が出ている」と評価。自身が注目するアーティストとして、ピーチ・モモコの名前を挙げている。

ドキュメンタリー『フランク・ミラー:アメリカン・ジーニアス』がデジタル配信

ミラーのキャリアを追ったドキュメンタリー『フランク・ミラー:アメリカン・ジーニアス(原題:Frank Miller: American Genius)』は、クリエイティブ・パートナーのシレーン・トーマスが監督を務め、ピクチャーハウスが配給。ミラーの半世紀近くに及ぶキャリアだけでなく、コミックという文化そのものや、それを支える世界中のファンにも焦点を当てている。

同作は2024年6月に米国で一夜限りの劇場上映が行われた作品で、今回、デジタル配信がスタートした。

ミラーはこのドキュメンタリーについて、コミックという「すばらしいサブカルチャー」に触れながら、「世界中で自分たち自身を祝福している文化」を描いた作品だと説明している。

また、クリストファー・ノーラン監督の『オデュッセイア』も鑑賞したというミラー。古代ギリシャを舞台にした自身の代表作『300』を手がけた彼は、同作について「本当に多くのことを正しくやっていた」と評価した。

『ダークナイト・リターンズ』『シン・シティ』をはじめ、コミック界に大きな影響を与えてきたミラー。69歳となった今も「コミックというメディアをどこへ持っていけるのか、今になって自由に探求しているような気がする」と語り、創作を続ける意欲を示している。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

【関連記事】

スポンサーリンク

類似投稿