『Musk』、ユニバーサルが海外公開を再検討|イーロン・マスク描く約4時間のドキュメンタリー
イーロン・マスクのドキュメンタリー『マスク(原題:Musk)』をめぐり、ユニバーサル・ピクチャーズが北米以外での配給を再検討しているようだ。ヴェネツィア国際映画祭では高い反響を得た一方、同社は現時点で海外公開日を決めておらず、最終的に製作陣へ権利を返還する可能性も浮上している。
ユニバーサル、『マスク』の海外公開を再検討
アカデミー賞受賞ドキュメンタリー監督のアレックス・ギブニーが手がけた『マスク』は、9月に開催された第83回ヴェネツィア国際映画祭でワールドプレミアを迎えた。約4時間に及ぶ本作は、イーロン・マスクの生い立ちから、テスラやスペースX、X(旧Twitter)、DOGE(政府効率化省)での活動まで、その巨大な影響力を掘り下げている。
ヴェネツィアでの上映後には約5分間にわたる拍手が起こり、観客からギブニー監督への感謝の声も上がったという。続いてトロント国際映画祭でも上映され、作品への注目はさらに高まっている。
一方、ユニバーサル・ピクチャーズは、北米を除く地域での配給権を保有しているものの、いまだ海外公開日を設定していない。さらに、同社が今後の方針について製作陣に伝えていないとされる。
『ハリウッド・リポーター』が事情を知る関係者2人に取材したところ、最終決定はまだ下されていないものの、ユニバーサルが公開を見送り、製作陣に権利を返還する可能性があるとの見方が示された。ユニバーサルは公開計画についてコメントを控えている。
『マスク』をめぐる政治的な背景
ユニバーサルが公開を再検討している背景には、現在の米国における政治的な状況もあるとみられている。
『マスク』では、マスクがDOGE在籍時に収集したデータを、今後の米国中間選挙で民主党に対抗するために利用する可能性が指摘されている。作中では、AI研究の第一人者でノーベル賞受賞者のジェフリー・ヒントンが、この問題について言及している。
また、マスクとドナルド・トランプ大統領、さらに連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員長との関係も、作品を取り巻く政治的な文脈の一つとなっている。カー氏はこれまでマスクを擁護してきたほか、FCCは現在、ユニバーサルの親会社コムキャストのDEI(多様性・公平性・包摂性)施策について調査を進めている。
こうした状況を背景に、ユニバーサルが『マスク』を公開することで、トランプ政権やその周辺との関係に新たな緊張が生じる可能性を懸念しているのではないか、との見方が出ている。ただし、これは関係者による見方であり、ユニバーサルが公開を見送る理由を公式に明らかにしたわけではない。
ユニバーサルは2023年に配給権を取得
ユニバーサルが『マスク』の北米以外の配給権を取得したのは2023年。当時は、マスクがトランプ氏と正式に連携する以前で、現在とは政治的な状況も大きく異なっていた。
マスク本人はギブニー監督の作品について「ヒット・ピース(攻撃的な作品)」などと批判しており、弁護士のアレックス・スピロも、ギブニーの製作会社に対して法的措置の可能性を示唆する書簡を送っている。マスクが完成した作品を実際に鑑賞したかどうかは明らかになっていない。
北米では、インディペンデント系の配給会社ブリーカー・ストリートが劇場公開を担当する。米国では10月9日にニューヨークとロサンゼルスで先行公開され、10月16日から全米公開される予定だ。
また、HBOは2023年に北米でのテレビ・ストリーミング配信権を取得。ギブニー監督に撮影を続けるよう働きかけ、追加の製作費も提供したという。製作陣が4カ月間の有料ビデオ・オン・デマンド(PVOD)期間を確保しているため、HBOでの最速の放送・配信時期は2027年2月になる見込みだ。
一方、ユニバーサルが公開を見送った場合、契約上は製作陣に対して「キル・フィー(公開中止に伴う違約金)」を支払うことになると、関係者は説明している。その場合、製作陣はユニバーサルに返還された地域の配給権を改めて別の会社に売却できる。
ヴェネツィア、トロントでの上映を経て海外でも注目を集めている『マスク』。ユニバーサルが最終的にどのような判断を下すのか、今後の動向が注目される。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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