トム・クルーズのキャスティング騒動から幻の続編まで──ニール・ジョーダンが『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』を回想
1994年の映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』で、トム・クルーズがレスタト役に起用された際、原作者アン・ライスがキャスティングに異議を唱え、大きな議論を呼んだ。ニール・ジョーダン監督は今回、4K版のリリースに合わせて当時を振り返り、クルーズが批判をむしろ役作りへの挑戦として受け止めていたことや、ブラッド・ピットの過酷な撮影について明かした。
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』トム・クルーズのレスタト役にアン・ライスが反発
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』は、アン・ライスの小説をジョーダン監督が映画化した作品。トム・クルーズがレスタト、ブラッド・ピットがルイ、キルスティン・ダンストがクローディアを演じた。
なかでもクルーズのレスタト役は、製作段階から大きな議論を巻き起こした。原作者で脚本も手がけたライスは、長年にわたってレスタト役を演じる俳優を思い描いており、ルトガー・ハウアー、ジュリアン・サンズ、ダニエル・デイ=ルイス、ジョン・マルコヴィッチ、トム・ハンクスらの名前を候補として挙げていた。
そのため、クルーズのキャスティングにはライス自身が反発。ジョーダン監督によれば、こうした状況は自身やクルーズ、そして作品全体にとって大きな負担になったという。
「監督としても、俳優としての彼にとっても、そして作品全体にとっても大変なことだった。世界中が『あなたたちは間違っている』と言っているような状況だったから」
ジョーダンは、ライスによるクルーズのキャスティングへの反対を「完全な気を散らす要因だった」と振り返る。
「歓迎できるものではなかった。自分たちが正しいことを証明するために挑戦しなければならない、という状況は望ましくない。キャラクターを成立させ、映画を成立させることに集中したいんだ」
一方、クルーズ本人は周囲の批判を別の形で受け止めていた。
「誰もが彼はこの役にふさわしくないと言ったからこそ、彼はそれを間違いだと証明することへの挑戦を楽しんでいた」
ジョーダンによれば、当時のクルーズは、それまでとは異なる自分の一面を探り始めていたという。
「彼は“トム・クルーズではない部分”を探り始めたばかりだった。彼には、まだ探っていない多くの側面がある」
ライスはクルーズとピットの役を入れ替える案まで提案していたという。しかし、最終的にピットはルイ役、クルーズはレスタト役を演じることになった。
ブラッド・ピットは過酷な夜間撮影に苦しんでいた
ルイ役を演じたブラッド・ピットも、撮影中には大きな苦労を抱えていた。
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』では、ニューオーリンズ、パリ、ニューヨークで約6カ月にわたって夜間撮影が行われた。さらに、ピットは顔に血管を描くメイクを施され、特殊なコンタクトレンズを装着したうえ、血を顔から抜くために逆さ吊りになる撮影も経験した。
ジョーダン監督は「すべて自分の責任だ」と振り返る。
「6カ月間、夜に撮影した。ルイというキャラクター自身が感じている閉塞感を、ブラッドも感じていたんだと思う」
当時、ピットは『テルマ&ルイーズ』『リバー・ランズ・スルー・イット』『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』などを経て、スター俳優として飛躍しようとしていた時期だった。
ジョーダンは、その後のピットの出演作にも触れ、『セブン』『ファイト・クラブ』やクエンティン・タランティーノ作品では、より筋肉質で攻撃的、そしてアメリカ的な役柄を演じるようになったと指摘。
「もしかすると、彼が進みたかったのはそちらの方向だったのかもしれない。ただ、当時はまだ進む方向の間にいたんだと思う」
ニール・ジョーダンが語るキルスティン・ダンストの才能
クローディアを演じたキルスティン・ダンストについては、11歳だった当時から将来を確信していたという。
「彼女に会ってオーディションをした瞬間、彼女は一生演技を続けるだろうと分かった」
ジョーダンは、子役を起用する際に感じる不安もダンストにはなかったと明かす。
「彼女はすばらしい俳優だっただけでなく、物語のなかでもっとも興味深い役のひとつを演じた」
クローディアは、吸血鬼になったことで永遠に子どもの姿のまま成長できないキャラクター。ジョーダンはそこに「おとぎ話のような不気味さ」があり、「磁器の人形のよう」だったと語る。
「登場人物たちが直面するさまざまな葛藤のなかでも、彼女の抱える問題が最も興味深かった」
『ヴァンパイア・レスタト』続編も執筆していた
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のラストでは、トム・クルーズ演じるレスタトが再び登場する。ジョーダンによれば、原作の結末を「少し弱い」と感じたため、レスタトを再登場させる独自のエンディングを書いたという。
「本の結末は少し弱いと感じていた」
そのためジョーダンは、レスタトを再登場させる結末を書いたという。
映画の完成後、ワーナー・ブラザースからアン・ライスの『ヴァンパイア・クロニクルズ』第2作『ヴァンパイア・レスタト』の脚本執筆を依頼され、実際に脚本を書き上げていた。
ただ、ジョーダンが描きたかったのは、現代でロックスターとして活動するレスタトよりも、18世紀の彼の物語だった。
「レザーパンツを履いて、筋肉質な体をしたデヴィッド・リー・ロスやイギー・ポップのようなロックスターとしてのレスタトには、あまり興味がなかった。少しばかり陳腐に思えた」
脚本の中心となったのは、18世紀のレスタト。本人の意思に反して吸血鬼にされるまでの過程を描く内容だったという。
「それを映画にできていたらよかった。『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のラストと同じように、ゴールデン・ゲート・ブリッジから始めていたと思う」
しかし、当時のクルーズは続編に出演することに積極的ではなく、レスタト役を再び演じることもなかったため、ジョーダンが執筆した続編は実現しなかった。
原作の雰囲気を残した映画化を目指した
ジョーダンは『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』を映画化するにあたり、原作の雰囲気をできる限り残すことを重視した。
企画自体は長年にわたって進められており、ジョーダンが参加した時点で脚本から原作の多くの要素が削られていたという。
そこでジョーダンは、デヴィッド・ゲフィンとワーナー・ブラザースに自分自身で脚本を改稿する機会を求めた。
「アンの本に戻って、そこから多くの要素を再び取り入れた」
その結果、ルイが抱える喪失や、レスタト、ルイ、クローディアによって形成される特殊な家族の関係など、原作の重要な要素を映画に取り戻した。
ジョーダンは、本作について「映画として成立させながら、できる限り原作に忠実にした」と説明する。
「この物語の中心にあるのは、2人の男性、セクシュアリティ、そして血というメタファーだ。そして、その中心には子どもがいるゲイの家族がある。家族をつなぎ止めるために、その子どもが作られる。すべてそこにある」
ジョーダンにとって、レスタトが支配的な存在で、ルイが受動的な存在、そしてクローディアが子どもという3人の関係こそが物語の核だった。
「だから私は、この家族の物語を映画にしようと思った。できる限り原作そのものを反映することが、自分の仕事だと考えていた」
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の4K Blu-rayでは、ジョーダン監督による音声解説や未公開シーンなども収録されている。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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