マスクのAI版『オデュッセイア』はなぜ酷評された?──ノーラン監督の映画版に対抗する映像に厳しい声
イーロン・マスクが支持するAI生成版『オデュッセイア』の第1話が公開されたものの、視聴者からは「魂がない」「ゾンビのようだ」といった厳しい声が相次いでいる。クリストファー・ノーラン監督による映画版を批判してきたマスクは、生成AI「Grok Imagine」を活用した映像作品を公開。しかし、その仕上がりには厳しい評価が寄せられている。
英紙『テレグラフ』もAI版『オデュッセイア』酷評 映像の不自然な表情や演技を指摘
今回の映像は、AI映像制作を手がけるWonder Studiosと、監督のデヴ・ウォーカーが共同で制作した。
英紙『テレグラフ』の批評家は、映像の粗雑さや不気味さを指摘。表情に乏しい登場人物や感情が伝わりにくい演技についても、ゾンビのような不気味さがあると評した。また、場面ごとにペネロペの容姿が異なる点にも言及し、映像の完成度を厳しく批判している。
一方で、戦闘シーンについては、ザック・スナイダー監督の映画『300〈スリーハンドレッド〉』を思わせる壮大さがあるとも評価した。
Xで公開された映像には、批判的なコメントが相次いだ。「魂のない粗悪な作品」「脚本が平板でありきたり」といった意見のほか、登場人物の声や表情、身のこなしから感情が十分に伝わらないという指摘も寄せられた。
あるユーザーは、映像の見た目を整えるだけでは不十分であり、脚本家の仕事や創作上の工夫こそが作品の質を左右すると批判した。
一方で、映像を評価する声も一部では見られた。CGのように見える部分があるとしながらも、全体としては印象的な仕上がりだとして、続編に期待する意見も寄せられている。
AI映像のリアルさだけでは不十分? 視聴者が求める物語性
今回の反応は、生成AIによる映像制作の進化と、視聴者が作品に求めるものの変化を浮き彫りにした。
生成AIによる映像制作が現在ほど進化していなかった1年前であれば、実写と見まがうほどの映像表現そのものが、より高く評価されていた可能性がある。しかし、生成AIによる映像制作が急速に進化するなか、視聴者は技術的な目新しさだけでは満足しなくなっているようだ。
公開後の月曜日時点で、X上での映像の表示回数は680万回に達していた。ただし、インプレッション数はタイムラインなどに投稿が表示された回数を示す指標であり、動画が最後まで視聴された回数とは異なる。
イーロン・マスクはノーラン監督の『オデュッセイア』を繰り返し批判
マスクは以前から、クリストファー・ノーラン監督による映画版『オデュッセイア』のキャスティングを批判してきた。
批判のきっかけの1つとなったのは、ルピタ・ニョンゴが映画版『オデュッセイア』でヘレン役を演じるとの報道だった。マスクは2026年1月、キャスティングをめぐる報道を受け、ノーラン監督は「誠実さを失った」とXに投稿した。
さらに5月には、保守派論客のマット・ウォルシュがノーラン監督を「臆病者」と批判した投稿に同調。映画への多様性の導入が、アカデミー賞のインクルージョン要件を満たすためのものだとする見方も示した。
こうした批判が続く一方、ノーラン監督の『オデュッセイア』は世界興行収入17億8,000万ドルを超え、同監督の作品として最高の興行成績を記録した。
マスクが掲げる「ホメロスの芸術に忠実で、歴史的に正確な」AI版は、ノーラン監督の映画版に対抗する試みとも受け取れる。しかし、公開された第1話への反応を見る限り、生成AIの技術力だけで観客を納得させるのは容易ではなさそうだ。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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