元ルーカスフィルム社長、AI映画に懐疑的姿勢 「人間の経験が不可欠」と強調
映画業界の重鎮であり、『スター・ウォーズ』シリーズを率いてきたキャスリーン・ケネディが、AI技術の映画制作への導入に慎重な姿勢を示した。AIサミットでの発言からは、創作における人間の経験や感性の重要性を改めて問う姿勢が浮かび上がった。
AI映画に欠ける「人間の経験」とは
4月にニューヨークで開催されたAI関連イベントで、ケネディはAI企業Runwayの共同創業者クリストバル・バレンスエラとの対談に登壇した。
彼女は創作における「テイスト(感性)」の重要性を強調し、「それは人生経験や教育に根ざしている」と指摘。優れた映画監督や撮影監督は美術的な素養を背景に持つとした上で、「AIが主導する作品には、そうした経験が本質的に欠けている」との見方を示した。
会場ではAIの可能性を称賛する声も多く、Adobeやパラマウントの関係者が創作の効率化や表現の拡張に言及。しかしケネディは、AIの全面的な活用には慎重な立場を崩さなかった。
制作工程では有用も、創造の核心には疑問
ケネディは、AIの活用自体を否定しているわけではない。プリビズ(事前可視化)やスケジューリング、予算管理といった実務面では有効だと認めている。
一方で「実際の制作段階に入ると問題が生じる」と指摘。「どんな作品を作ろうとしているのか、その本質的な問いに、AIは応えられるのか」と疑問を呈した。創作過程における予測不能な要素こそが作品に深みを与えるが、AIは本質的に“予測可能”であるため、その再現は難しいという。
ハリウッドの不信感と「透明性」の課題
さらに彼女は、AI開発を巡る議論において「透明性」が不足していると強調した。特に言語モデルの学習プロセスについて、ハリウッドのクリエイターたちは十分な情報を得られていないと感じているという。
「何が行われているのか分からないという不安がある」とし、開発過程やツール利用の透明性が高まれば、不信感の解消につながるとの見解を示した。
AIがもたらす新たな表現の可能性
一方で、ケネディはAIの新たな活用方法にも一定の関心を示した。たとえば脚本に対して複数の俳優の“仮想的な意見”を得るといった使い方に言及し、多様な視点を取り入れる手段としての可能性を評価した。
また、AIの進化により「従来の2時間映画やテレビとは異なる体験」が生まれる可能性にも触れ、短尺コンテンツなど新たなフォーマットの台頭を示唆した。
技術と人間の創造性のあいだで
ケネディは、過去に3Dプリンターで制作された小道具が撮影中に壊れやすかった経験にも触れ、「人間の手による選択や素材の理解がいかに重要かを実感した」と語る。
音楽や照明といった要素においても、長年の経験に裏打ちされた判断が作品の質を左右すると強調。「古典的な訓練を受けた人物が現代的な表現を手がけるとき、意思決定の深みがまったく異なる」と述べ、人間の学習と経験の価値を改めて強調した。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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