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2026年カンヌ映画祭、なぜハリウッド大作は姿を消したのか

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2026年カンヌ映画祭、なぜハリウッド大作は姿を消したのか
カンヌ映画祭2026、ハリウッド不在の理由とは 写真:Courtesy of THR
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カンヌ映画祭の今年のラインナップには、例年とは異なる変化が見えている。2017年以来初めて、大手ハリウッドスタジオ作品が1本も公式プレミア上映されないのだ。華やかなレッドカーペットで知られる世界最大級の映画祭だが、いまスタジオ各社は、カンヌが本当に最適な“発射台”なのかを慎重に見極め始めている。

ハリウッド大作が消えた今年のカンヌ映画祭

コンペティション部門には、アイラ・サックス監督の『The Man I Love』、ジェームズ・グレイ監督の『Paper Tiger』といったアメリカ作品が並ぶ。だが、いずれもインディペンデント作品であり、かつてのようなスタジオ主導の大型作品は姿を消した。

近年のカンヌでは、『トップガン マーヴェリック』、『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』、『エルヴィス』、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』など、大手スタジオ作品が世界展開の起点としてプレミア上映を行ってきた。今年は、その流れが明確に途切れている。

カンヌ映画祭のティエリー・フレモー芸術監督も、4月のラインナップ発表で「アメリカ映画はあるが、スタジオ作品は少ない」と認めた。

カンヌ映画祭の“高すぎる代償”

カンヌがスタジオに提供できる価値は明快だ。芸術的な権威、世界中のメディア露出、そして映画界随一の華やかなレッドカーペットである。

一方で、その代償は小さくない。大作映画の場合、A級スターの渡航費、宿泊費、警備費を含めると、プロモーション費用は数百万ドル規模に膨らむこともある。

米エンターテインメント業界が依然としてコスト圧縮局面にあるなか、こうした支出は削減しやすい項目になりつつある。あるベテラン広報担当者は、「もし何千人もの記者に初披露して反応が悪ければ、それは最悪のスタートになる」と指摘する。

『インディ・ジョーンズ』が残した教訓

スタジオ関係者の間でしばしば引き合いに出されるのが、2023年の『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』だ。

15年ぶりのシリーズ新作として大きな注目を集めた同作は、カンヌで世界初上映されたものの、国際メディアからの評価は伸び悩んだ。その後の興行収入は世界で3億8,400万ドルにとどまり、製作費2億9,500万ドルを考えれば、期待を大きく下回る結果となった。

いまでは、カンヌでの早すぎるお披露目がマーケティング上の誤算だったと見る向きも少なくない。

SNS時代、映画祭の初動リスクが拡大

スタジオ各社が警戒しているのは、カンヌだけではない。映画祭そのものの“初動リスク”が高まっている。

公開まで数カ月ある段階で批評が解禁され、否定的な反応が瞬時にSNSで拡散されれば、作品のイメージは一気に固定されかねない。

その象徴とされたのが、2024年のヴェネチア国際映画祭で初披露された『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』だ。批評家から厳しい評価を受け、その後の興行も世界で約2億ドルにとどまった。

トロント国際映画祭のキャメロン・ベイリー代表は、「SNS時代では、映画祭での反応がこれまで以上に速く広がる」と分析する。

成功するのは公開直前の作品だけ

カンヌでのプレミアが効果を発揮しやすいのは、公開日が映画祭直後に控えている作品に限られる。

その好例が、2022年の『トップガン マーヴェリック』だ。同作は5月18日にカンヌで上映され、その9日後の5月27日に世界公開された。すでに先行試写で高い評価を得ていたこともあり、カンヌは“勝利の場”として機能した。

だが、今年の米公開スケジュールを見ると、カンヌと十分に近いタイミングで公開される大型作品はほとんどない。

スティーヴン・スピルバーグ監督の『ディスクロージャー・デイ』は映画祭終了から数週間後の6月12日に公開。『トイ・ストーリー5』は6月17日、『オデュッセイア』は7月17日、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の『Digger』は10月1日に控えており、いずれもカンヌを宣伝の主軸に据えにくい。

A24にも見える慎重姿勢

インディ系ながらメジャー級の存在感を放つA24も、今年のカンヌには作品を送り込んでいない。

昨年はアリ・アスター監督の『エディントンへようこ』などを出品したが、期待ほどの反響を得られず、その後の興行も伸び悩んだ。

一方、ジョシュ・サフディ監督の『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』は主要映画祭を避け、ニューヨーク映画祭で比較的コントロールしやすい形で披露。批評面でも好意的な支持を受け、ティモシー・シャラメを軸にしたSNS展開も追い風となり、世界興収1億9,000万ドル超のヒットを記録した。

カンヌ映画祭は“世界映画の場”へ回帰するのか

かつてカンヌは、ハリウッド大作の華やかなお披露目の場であると同時に、アカデミー賞戦線の重要な出発点でもあった。

その役割は今も国際映画やインディ作品では健在だ。ヨアキム・トリアー監督の『センチメンタル・バリュー』、ジャファール・パナヒ監督の『シンプル・アクシデント 偶然』は、カンヌでの高評価を足がかりにアカデミー賞まで駆け上がった。

ただ、スタジオ側には別の成功例もある。映画祭を経ずに公開されたライアン・クーグラー監督の『罪人たち』や、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ワン・バトル・アフター・アナザー』の健闘は、「適切な作品であれば映画祭なしでも十分に成功できる」という認識を強めている。

大手スタジオがより管理しやすい公開戦略へと傾くなか、カンヌ映画祭はあらためて、作家性の強い作品や世界各国のインディ映画のための舞台へと重心を戻しつつある。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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