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セバスチャン・スタン新作『Fjord』米レビュー|価値観の衝突を描く問題作

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セバスチャン・スタン新作『Fjord』米レビュー|価値観の衝突を描く問題作
『Fjord』 写真:Cannes Film Festival
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ノルウェーの児童保護制度を題材にしたクリスティアン・ムンジウ監督の新作『Fjord(原題)』が注目を集めている。セバスチャン・スタンとレナーテ・レインスヴェを主演に迎えた本作は、児童虐待の疑惑をきっかけに一家が社会から追い詰められていく姿を描いた社会派ドラマだ。

セバスチャン・スタン新作『Fjord』が描く“正しさ”の暴走と価値観の衝突

ルーマニア出身のミハイ(演:セバスチャン・スタン)と、ノルウェー人の妻リスベット(演:レナーテ・レインスヴェ)は、5人の子どもを連れてノルウェー西部の小さな港町へ移住する。

一家は敬虔なキリスト教徒で、子どもたちは家事を手伝い、日々聖書を学ぶ生活を送っている。一方で、スマートフォンやインターネット、現代音楽などは禁止されており、その厳格な教育方針が周囲から徐々に疑問視されていく。

物語が大きく動くのは、長女エリアの首元のあざを教師が発見したことから。学校側は児童保護局へ通報し、軽い体罰の存在を知った当局は、十分な証拠がないまま子どもたちを保護下に置いてしまう。

ムンジウ監督は、当初は保守的な両親を“問題ある存在”のように見せながら、次第に彼らを裁く側の“進歩的”な価値観へと批判の矛先を移していく。

ノルウェー社会への鋭い視線

作中では、ジェンダー教育や多様性に関する価値観の違いも重要なテーマとして扱われる。

エリアの妹が、同性愛を「罪」と発言したことで学校側が強い警戒感を抱く場面など、文化的・宗教的背景の違いがコミュニティ内で不信感へ変わっていく過程が描かれる。

特に印象的なのは、児童保護局が極めて迅速に子どもたちを里親へ引き渡す展開だ。親子の面会ですら厳しく制限され、行政側が事実上“有罪”を前提に動いているような空気が、強い緊張感を生み出している。

レビューでは、この構図がトマス・ヴィンターベア監督の『偽りなき者』を想起させるとも指摘されている。ただし、『Fjord』はサスペンス色よりも、静かで冷徹なリアリズムを重視した作品に仕上がっているという。

セバスチャン・スタンの演技に高評価

中でも高く評価されているのが、セバスチャン・スタンの演技だ。

厚い眼鏡と髭、薄毛姿で登場するスタンは、怒りを内に抱えながらも感情を抑え込む父親像を繊細に表現。独善的で頑固な人物として描かれながらも、家族への深い愛情を感じさせる演技が称賛されている。

一方、リスベット役のレナーテ・レインスヴェも、突然子どもたちを奪われた母親の混乱と悲痛を抑制的に演じ、作品全体に静かな説得力を与えている。

『4ヶ月、3週と2日』で2007年カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したムンジウ監督らしく、『Fjord』でも善悪を単純化せず、社会制度や価値観の衝突を観客へ突きつける作品になっている。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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