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【インタビュー】『アン・リー/はじまりの物語』振付師セリア・ロールソン=ホールが語る、祈りとしてのダンスと振り付けの舞台裏

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『アン・リー/はじまりの物語』振付師セリア・ロールソン=ホールにインタビュー
セリア・ロールソン=ホール 写真: ©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved
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アマンダ・セイフライド主演映画『アン・リー/はじまりの物語』が6月5日に劇場公開される。

18世紀に人種や男女の平等を説き、シェーカー教団の指導者となった実在の女性アン・リーの波乱に満ちた半生を描く。

製作には、監督のモナ・ファストヴォールド、共同脚本・製作のブラディ・コーベットをはじめ、アカデミー賞受賞作『ブルータリスト』の主要メンバーが再結集した。

本作は、ミュージカルシーンをふんだんに盛り込んだ18世紀を舞台にした歴史劇だ。

シェーカー教団の祈りとしてのダンスを創造し、その精神性に命を吹き込んだのは振付師セリア・ロールソン=ホール。ダンスの枠を超え、シェーカー教徒の祈り、そして魂の叫びを振り付けで再現した。

この度、ハリウッド・リポーター・ジャパンは、セリア・ロールソン=ホールに単独インタビューを実施。

シェーカー教徒の「恍惚としたダンス」をどう身体に宿していったのか、アマンダ・セイフライドとの創作秘話、そして現代を生きる私たちへ届けたいメッセージを語ってくれた。

『aftersun/アフターサン』では俳優を務めたほか、映画監督、脚本家、ダンサーといった多彩なキャリアを持つセリアだからこそ生み出された、表現の神髄に迫る。

『アン・リー/はじまりの物語』振付師セリア・ロールソン=ホール
『アン・リー/はじまりの物語』より ©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved

「すべてのダンスは祈り」シェーカー教徒の哲学を身体表現へ

——振付師として本作に参加されて、どのような想いを抱かれましたか。

モナ・ファストヴォールド監督とは、これまでにも数々の作品を一緒に手掛けてきました。本作でこれほど深く共同創作ができるなんて、夢のようです。お互いの美学や目指す世界観をよく理解しているので、アーティストとして世界に届けたいヴィジョンを、本作で表現できたことは特別な経験でした。

——シェーカー教の文献や資料が少ない中で、祈りとしての動きやダンスはどのように作り上げていったのでしょうか。

まず振付師として何よりも大切にしたのは、すべての動きやダンスは「祈り」であることです。この本質を観客に届けるため、なるべくシンプルな動きにしました。誰もが自分のものにできて、その一部になる一体感を感じてほしかったのです。

振り付けの構想にあたり、唯一手掛かりとなったのは、シェーカー教徒たちがアメリカのニスカユーナという礼拝共同体での暮らしを描いた美しいイラストです。それらをインスピレーションの源泉にし、葬儀のシーンでシェーカー教徒たちが小さな円を描いていくダンスを、作品の着地点に設定しました。その着地点へとつながる物語を描くため、「アン・リーの旅路はどう始まり、どんな想いで歩んできたのか」と問いを立てて紐解いていったんです。

『アン・リー/はじまりの物語』振付師セリア・ロールソン=ホール
『アン・リー/はじまりの物語』より ©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved

またシェーカー教徒の建築、美学、デザインといった彼らが大切にしてきた精神性も、ダンスの中へと織り込んでいきました。

着地点と対比となる物語の始まりには、魂を揺さぶるような重厚感を持たせました。荒々しい躍動感と野性的なエネルギーを持った動きが、だんだんと洗練されたものへと進化していく。その軌跡を描いていたのです。

シェーカー教徒は、一晩中踊り続けることも多かったそうです。きっと身体も精神状態も、天地さえも歪むような浮遊感があったはずです。長時間踊るシーンでは、神への愛と讃美に心酔している恍惚感を動きに加えていきました。

恍惚としたダンスはどう身体に宿していったのか

——シェーカー教徒たちは一晩中踊っていたとのことですが、長時間踊り続けた恍惚感や陶酔感はどのように振り付けで表現したのでしょうか。

シェーカー教徒の祈りとしてのダンスや動きに関して、私自身が自由に創作することができました。2人のアシスタントとスタジオへ入り、アーカイブに残されていたシェーカー教団の賛美歌、そして作曲家のダニエル・ブルームバーグが再構築した賛美歌を何度も聴き込みました。賛美歌を聴いているうちに、その旋律が身体の奥深くまで浸透していき、五感が研ぎ澄まされていくのを感じました。その感覚を軸にして、より崇高な世界へと導かれる表現を目指したのです。

祈りのダンスを何度も繰り返していくと、心身ともに極限まで追い込まれるのと同時に、なぜか内側から新たな力が溢れ出すのを感じます。そこで意識したことは、神へ祈りを捧げながら、神から恵みを授かっているような双方向の感覚でした。

『アン・リー/はじまりの物語』振付師セリア・ロールソン=ホールにインタビュー
『アン・リー/はじまりの物語』より ©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved

——祈りとしての動きとダンスでは、手の表現が繊細で美しかったです。日本では、「手当て」という傷や病気を癒し治療するという言葉があります。また手を合わせる動作には、世界共通して神を拝んだり感謝する意味が含まれていますよね。この祈りとしての動きや踊りにおいて、手にどのような意味を込めたのでしょうか。

人の感情はすべて手に宿り、手で語れると信じています。映画の振付において、私が最も重視するのは手の動きなんです。全身が映っていなくても、手の表情ひとつで、登場人物の人生の片鱗や心の渇望を物語れる。

シェーカー教徒はダンサーではなく、農作業や機織り、鍛冶といった労働を日々の営みとしてきた人々です。彼らの手は、日々の労働そのものでした。踊っていても、その手の動きには、長年積み重ねてきた労働の記憶が深く刻まれているんです。

『アン・リー/はじまりの物語』振付師セリア・ロールソン=ホールにインタビュー
『アン・リー/はじまりの物語』より ©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved

手をつなぐ、手を合わせる、誰かの手をとる行為は、眠っていた感覚を呼び覚ます大切な触れ合いです。シンプルでありながら、そこには言葉を超えた力強さがあります。

本作での手の動きは、「シスター、ブラザー」と呼び合うシェーカー教徒たちの絆を表しています。また、神とのつながりの象徴と考えました。アン・リーは「目的意識を持って仕事をすることの大切さ」を説いていますが、全身全霊で仕事と向き合う彼らの手は、神と繋がっていると捉えたのです。このようにして、アン・リーが説いた思想やシェーカー教徒の哲学を、手の表現に込めていきました。

『アン・リー/はじまりの物語』振付師セリア・ロールソン=ホールにインタビュー
『アン・リー/はじまりの物語』より ©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved

アマンダ・セイフライドと作り上げたアン・リーの祈り

——アン・リーは、18世紀に人種や男女の平等を説き、仕事への真摯な姿勢を持っていました。アン・リーを演じたアマンダ・セイフライドとは、振付についてどのようなヴィジョンを話し合いましたか。

アマンダは役者としてはもちろん、ダンサーとしても、物語を紡ぎ出す最高の表現者です。アマンダは振付の本質を深く理解し、アン・リーの痛みや喜びを、まるで自身の感情であるかのように表現してくれました。

アン・リーの振り付けで避けたかったことは、「振り付け」という枠組みで動きを決めてしまうことです。彼女の溢れ出る感情を起点とし、内側から自然と身体が動き出す状態を大切にしたかった。つまり、一つひとつの動きが明確な意図を持っているのです。

「なぜその動きがあるのか」と疑問に思うことはありませんでした。振付の根底にはアン・リーの祈りがあります。物語から自然に身体が動きだすような、そんな動きを追求しました。

——アン・リーの振り付けは身体から湧き上がる感情を意図を持って表現したとのことですが、他のシェーカー教徒たちの動きと違いはつけたのでしょうか。

役者、ダンサー、エキストラの一人ひとりと向き合って創作していきました。作品の世界を構成する指針はありましたが、それぞれの解釈を尊重して表現してもらうことを大切にしたのです。

個性が交わり、混沌とした中に調和を感じる、そんな統一感を目指しました。シェーカー教徒の礼拝には、荒々しい熱狂と、コミュニティとしての一体感が同居しています。同じ振り付けでも、誰の身体を通るかによって、その表現はまったく異なるものになっていく。ゆっくりと動くのか、激しく感情を解き放つのかは自由であっていいと思いました。それぞれの身体言語へと翻訳して表現する姿を見ることは、心躍るひとときでした。

『アン・リー/はじまりの物語』振付師セリア・ロールソン=ホールにインタビュー
『アン・リー/はじまりの物語』より ©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved

——アン・リーが4人の子どもを出産し喪失するシークエンスでは、本作の中でも重要なシーンになりますが、振付で大切にしたことはありますか。

このシークエンスでは、子どもを授かり母になる喜びから始まり、子どもを失い、そして一人病室にいるまでの道のりを4つの章で構成しました。そして脚本を読んだとき、希望から幕を開けることが何よりも重要だと感じました。

アンの絶望や喪失を丁寧に描き出すことで、「なぜ急に変わってしまったのだろう」と観客を置き去りにすることがないように、感情のグラデーションに共感できる説得力のある構成にしています。

母となる喜びから深い絶望まで、アマンダは感情の機微を見事に演じ切りました。最初の章では、自分の足で前へ踏み出す振付にし、人生を自ら切り拓こうとする意思を表現しています。

最後の章では、何も存在しない空間で何かを揺らす振り付けを取り入れました。抱いているのが我が子なのか、自分自身の一部なのかさえ曖昧になっていくことで、少しずつ現実から乖離していく姿を表現したのです。最初の章から、季節が静かに移ろうように、穏やかに最後の章へと向かっていくシークエンスです。

私は当時8ヶ月の息子を抱きながら見守っていたのですが、現場にいる全員が涙を堪えきれませんでした。我が子を失う運命に立ち向かうには、どれほどの痛みと強さが必要だったでしょう。私にとっても思い入れの強いシークエンスについて、質問していただいて嬉しかったです。

『アン・リー/はじまりの物語』振付師セリア・ロールソン=ホールにインタビュー
『アン・リー/はじまりの物語』より ©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved

——セリアさんご自身も監督、俳優、ダンサー、脚本家としても活躍されていますが、これまでのキャリアは本作でどのように生かされましたか。

それぞれの立場を経験したからこそ、本作で振付師として携われたと感じています。振り付けをするときは、「自分が演者だったらどうするか」という視点を欠かしません。スタジオではアンだけでなく、すべての登場人物になり切って演じました。彼らが体験していることを、身体を通して表現していくので

監督としての経験があるからこそ、監督が描くヴィジョンには周囲の支えが必要だと理解しています。モナが本当に求めているものを深く汲み取り、それを振付の中へ丁寧に織り込んでいきました。「作品という大きなキャンバスで私は何色なのか」を常に考え、どうしたら監督のヴィジョンを具現化できるかを探っていきます。

私にとって、脚本を執筆することと振付を創作することは、ほぼ同じ感覚です。脚本を執筆するときには、振付のイメージも書き込んでいきます。

『アン・リー/はじまりの物語』振付師セリア・ロールソン=ホールにインタビュー
『アン・リー/はじまりの物語』より ©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved

ダンサーとしては、長時間立ち続ける過酷さを身をもって知っています。だからこそ、振り付けの現場では身体への負担を最優先にし、ダンサーたちには「心と身体のケアを何よりも尊重する」と常に伝えています。

表現者として様々な経験をしてきた中で、私が何より大切にしているのは、共感と理解を持って人と向き合うことです。これまでの経験を作品へと注ぎ込み、作品に貢献していくことが私の目指す姿なのです。

現代を生きる私たちへのメッセージとは「愛があるから人は前に進める」

——アン・リーが生きていた18世紀と比べても、現代になっても今だ目に見えない女性への抑圧が存在すると思います。本作が今公開される意義と、またセリアさんが振付で表現したアン・リーの人生を通して、どのようなメッセージを持ち帰ってほしいですか。

映画もアン・リーの人生も、中心にあるのは愛という普遍的なテーマです。劇中で襲われるシーンでも、アンはシェーカー教徒たちに「もっと愛を(More Love)」と語りかけます。復讐ではなく、相手を許して、対話を求めるのです。世界では多くの悲しい出来事や争いが起きています。今の時代だからこそ、愛以上に大切なメッセージはないのではないでしょうか。

ダンサーが失敗を恐れたとき、私はいつもミスを指摘するより、愛を持って踊る大切さを伝えています。「小さなミスは気にしなくていいから、心に愛を持って踊ってほしい」とお願いするんです。

「もっと愛を」というテーマは、私の振り付けの基盤にもなっています。人は重圧や不安を抱えたとき、身動きがとれなくなるものです。そんなときに、一歩でも前に進む勇気となるのが愛だと思うのです。愛が持つ力を信じて、「もっと愛を」という信念を胸に、自分らしい人生を歩んでほしいと願っています。

『アン・リー/はじまりの物語』振付師セリア・ロールソン=ホールにインタビュー
『アン・リー/はじまりの物語』より ©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved

残念ながら、女性が抱えている抑圧は歴史の中でずっと繰り返されてきました。真の意味で、女性が完全に自由を享受できた時代は今まで一度も来ていません。この葛藤は私たちが生きている間も続いていくでしょう。

アン・リーはアメリカの歴史の中で、陰へと追いやられてきた女性です。その事実が、当時の女性が社会でどのような扱いを受けてきたのかを物語っています。彼女に向けられてきた眼差しは、現代の生きづらさや世界のあり方を象徴しているのではないでしょうか。

だからこそ、愛があるから人は前に進めるのだということ、そしてアン・リーの生き方を多くの人に知ってもらうことが何よりも大切だと思っています。

▼『アン・リー/はじまりの物語』【世界観の構築】特別映像

【作品情報】

『アン・リー/はじまりの物語』
6月5日(金)公開

  • 邦題:『アン・リー/はじまりの物語』
  • 原題:The Testament of Ann Lee
  • 監督/脚本/製作: モナ・ファストヴォールド
  • 脚本/製作: ブラディ・コーベット
  • 音楽: ダニエル・ブルームバーグ
  • 出演: アマンダ・サイフリッド、ルイス・プルマン、トーマシン・マッケンジー ほか
  • 配給: サーチライト・ピクチャーズ
  • 公式サイト:https://www.searchlightpictures.jp/movies/annlee
    ©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved

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