ホーム » MOVIES » 映画『SUMO 魂を鍛え抜く』監督が語る、力士の素顔とは

横綱が背負う犠牲、1500年の伝統……話題のドキュメンタリー『SUMO 魂を鍛え抜く』が映す“土俵の裏側”とは

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横綱が背負う犠牲、1500年の伝統……話題のドキュメンタリー『SUMO 魂を鍛え抜く』が映す“土俵の裏側”とは
エリック・シライ監督
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相撲について、どれほど知りたかったのか――?その答えは、エリック・シライ監督の没入型ドキュメンタリー『SUMO 魂を鍛え抜く』の中にあるかもしれない。第83回ヴェネツィア国際映画祭でワールドプレミアを迎え、現地時間10月13日開幕の第70回BFIロンドン映画祭で上映される同作は、厳しい稽古や儀式、痛みと犠牲まで、極めて閉ざされてきた相撲の世界に観客を誘う。

カメラは1年にわたり、第73代横綱の照ノ富士をはじめ、平戸海、米沢龍、康誠叶夢ら、キャリアの異なる力士たちを追う。日系アメリカ人のシライ監督は米『ハリウッド・リポーター』に対し、取材許可を得るまで3、4年を要した舞台裏や、観客に伝えたい思いを明かした。

▼『SUMO 魂を鍛え抜く』監督が語る、相撲との出会いと誤解

シライ監督にとって、相撲は深く関わる前から身近な背景だった。夕食時のテレビで見聞きしていたが、伝統や文化に興味を持ったのは大人になってからだ。「まげは偽物で、かつらだと思っていました」と振り返る。

一方で、制作を進めるうちに、解きほぐすべき点が数多くあると気づいた。「アメリカで日本人として育つ中で、日本の文化や伝統への誤解が数多くあると感じていました。だから、西洋の人々が日本に抱きがちな誤解を正す絶好の機会だと思いました」

■強さの定義は「謙虚さ」にあり

監督自身にも思い込みがあった。強さに対する考え方が、育った環境とはまるで違っていたのだ。「アメリカでは、男たちが胸をたたいて『俺が一番だ、俺こそGOATだ』と言うことが強さです。相手を怖がらせるために、自分を語っているようなものです。でも相撲では、強さの成り立ちがまったく違い、そこには謙虚さが組み込まれています」

では、強さとは何か。シライ監督が相撲から学んだ核心は、その多くが目に見えないものだという点だ。「粘り強さやひたむきさがそうです。体が小さくても、機敏であればいい。精神を築き、磨き上げるという考え方があります。相撲はほかの技芸と同じで、自分自身をよりよく理解し、精神を磨くための器なのです」

【動画】『SUMO 魂を鍛え抜く』本編映像

Live Boldly Excerpt from the upcoming ESPN Films SUMO: Spirit Weighs Nothing

▼3、4年かけて得た取材許可 焼き肉店の「長すぎる領収書」

相撲部屋や力士の世界に迫る許可を得ることが、最大の難関だった。日本相撲協会は秘密主義で知られ、部外者の受け入れに非常に慎重だという。「許可が下りるまで3、4年かかりました。だから、私たちは幸運でした」とシライ監督は明かす。

信頼を築くには、時間と忍耐が必要だった。「何度もカメラを持たずに通い、力士たちとただ一緒に過ごして、稽古を見学し、話をしました」撮影の前に、まず関係づくりから始めたのだ。

食事も、信頼を築く場になった。ある親方と交わした約束は、部屋の全員を焼き肉に連れて行くことだった。「店を貸し切りにして、食べ尽くす勢いでした。プロデューサーが領収書を高く掲げても、床に届いて丸まるほどの長さでした」と振り返る。「力士たちと食べて飲んで関係を築く、すばらしい機会になりました」

 

▼力士は「普通の男たち」 横綱が明かす犠牲

『SUMO 魂を鍛え抜く』は、力士たちの人間性に迫るドキュメンタリーだ。「どんな映画でも、人間性を引き出すことが大切です。それによって、人々は共感し、つながることができます」とシライ監督は語る。相撲では、体を大きくすることも厳しい課題の一つだという。

監督が目指したのは、相撲に対する固定観念を覆すことだ。大柄な体格や独特の装束から、見世物のように捉えられがちな力士たち。しかし、彼らもまた、私たちと同じ感情や悩みを抱える「普通の男たち」なのだと、映画を通じて伝えようとしている。

作中では、横綱が妻や子どもとの日常を見せるほか、糖尿病などの健康問題についても語る。15年にわたり相撲に身を捧げてきた横綱は、競技を続けるために私生活を犠牲にし、生涯にわたる身体の不調を抱えることもあると明かす。

「西洋文化では、弱さについて語りたがりません」とシライ監督は指摘する。一方、横綱は自身の経験を通じて、相撲に求められる献身と犠牲を伝えようとしていた。監督が魅力を感じるのは、個人の成功だけではなく、より大きな共同体のために尽くし、長い歴史を持つ伝統と文化を次の世代へとつないでいく姿勢だ。

▼1500年の伝統を、現代にどう続けるか

シライ監督は、映画からどんなメッセージを持ち帰るか観客に委ねている。「日本人であることの意味を、より深く理解してもらえたらと思います。相撲の多くは日本人の誇りに関わるものですから」

「自分より大きなものであり、この伝統を守り続けることなのです。1500年の歴史がありますが、現代では時代遅れのようにも感じられます。すべてが非常に原始的で、手作業で、アナログです。これが美しい伝統であり文化であること、そして現代でそれを続けることがどれほど大変かを、感じ取ってもらえたらと思います」

『SUMO 魂を鍛え抜く』の邦題と英題(『Sumo: Spirit Weighs Nothing』)は、異なる意味合いをもっている。「日本語の題名は、技芸を通じて精神を磨くという意味です」と監督は説明する。「つまり、相撲とは、自分自身を磨き、精神を磨くことなのです」

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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