20歳のYouTube出身監督が全米1位に!異色ホラー『Backrooms』&『オブセッション 災愛』の大ヒットが示す“ハリウッド新時代”とは
YouTubeから誕生した若きホラー監督たちが、いまハリウッドを揺るがしている。
20歳のケイン・パーソンズ監督による『Backrooms(原題)』が全米興収ランキングで首位デビューを果たし、興行収入8100万ドル(約129億円)を記録。A24作品として史上最大のオープニング成績を打ち立てた。さらに、同じくYouTube出身のカリー・バーカー監督による『オブセッション 災愛』(日本公開日:7月17日)も全米公開3週目にして異例のヒットを継続。低予算作品の常識を覆す驚異的な興行成績を記録している。
▼20歳で全米No.1監督に――『Backrooms』が記録づくめの大ヒット

ケイン・パーソンズ監督は、自身が10代の頃にYouTubeで展開していた大人気ホラーシリーズ『Backrooms』を映画化。製作費1000万ドル(約16億円)という比較的コンパクトな予算ながら、公開初週末だけで8100万ドル(約129億円)超を稼ぎ出した。
この快挙により、パーソンズ監督は全米興収ランキングで首位を獲得した史上最年少監督となった。これまでの記録保持者は、2012年公開の『クロニクル』で27歳にして全米1位を獲得したジョシュ・トランク監督だった。
【動画】たどり着いた先は、異次元空間…『Backrooms(原題)』予告編
観客の約86%が35歳未満、半数以上が25歳未満という若年層を中心に支持を集めている点も、『Backrooms』の大ヒットを象徴している。キャストには、キウェテル・イジョフォー(『サンキュー、チャック』)、レナーテ・レインスヴェ(『センチメンタル・バリュー』)ら実力派キャストが名を連ね、プロデューサーにはホラー界の重鎮ジェームズ・ワン(『死霊館』シリーズ)とオズグッド・パーキンス(『ロングレッグス』)が名を連ねている。

物語の主人公は、レインスヴェ演じるセラピストのメアリー・クライン博士。担当患者の謎の失踪をきっかけに、メアリーは終わりのない異次元空間「バックルーム」へと足を踏み入れる。ネットで話題となった不気味な無人空間=“リミナルスペース”を題材にした独創的な世界観が、大スクリーンでどのように描かれるのかにも注目が集まっていた。
▼『オブセッション 災愛』が起こした“E.T.級”の異変

一方、公開から時間が経つほど勢いを増しているのが、カリー・バーカー監督の『オブセッション 災愛』だ。
製作費わずか75万ドル(約1億2000万円)で作られた本作は、公開2週目と3週目の興行収入が初週を上回るという異例の現象を記録。クリスマスシーズンを除けば、1982年の『E.T.』以来となる歴史的な快挙となった。世界興収はすでに1億4800万ドル(約235億円)に到達。北米だけでも最終的に1億470万ドル(約166億円)規模に達すると予測されており、フォーカス・フィーチャーズ史上最大級のヒット作になる見込みだ。
【動画】高評価続々!異色のロマンティックホラー『オブセッション 災愛』予告編
『オブセッション 災愛』は、マイケル・ジョンストン演じる青年が、願いを一つ叶える不思議なアイテム「ワン・ウィッシュ・ウィロウ」を手に入れ、「彼女に愛されたい」と願ったことから破滅へと向かう“ダークでユーモラス”なロマンティックホラー。

弱冠26歳の新鋭による本作は、昨年のトロント国際映画祭でフォーカス・フィーチャーズが約1500万ドル(約24億円)を投じて配給権を獲得した作品としても大きな話題を呼んだ。
▼ハリウッドを脅かす「YouTube発映画」の新時代

今回の成功は、単なるヒット作の誕生ではない。業界内では、『Backrooms』と『オブセッション 災愛』の成功例が、「映画ビジネスの新しい経済圏」の到来を示しているとの見方が広がっている。
従来のハリウッドでは、映画学校や映画祭、スタジオ開発部門を経て監督が育成されてきた。しかしYouTube世代のクリエイターは、自ら数百万~数千万規模のファンコミュニティを築き、その観客を直接映画館へ動員できる。
【動画】ケイン・パーソンズ監督が10代の頃に制作した「The Backrooms」
実際、ケイン・パーソンズ監督はYouTubeチャンネル「Kane Pixels」で約300万人の登録者を抱え、『Backrooms』シリーズはネット上で巨大なカルチャー現象となっていた。
観客は映画を「宣伝されて観る」のではなく、「自分たちの作品」と感じて劇場へ足を運ぶ――。その構図は、1999年にインターネットを活用した口コミ戦略で社会現象を巻き起こした『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』をさらに進化させたものとも言える。
▼“新しいハリウッド”はYouTubeから生まれるのか

YouTubeの経営陣は「YouTubeは新たなハリウッドだ」と語る。クリエイターたちはファンとの直接的なつながりを武器に、自らIPを所有しながら作品を生み出し、劇場公開後はYouTubeでレンタル・購入配信することも可能だ。人気YouTuberのマーク・フィッシュバック監督は、新作『Iron Lung(原題)』でこのフローを実践(※現時点で、アジア圏は未配信)している。
クリエイターにとっては、劇場公開後に映画をYouTubeだけで独占配信(ペイウォール形式、または広告付きの無料配信)し、利益の大部分を自分の懐に入れる方が、既存の映画会社と配給契約を結んで微々たる分け前をもらうよりも遥かに魅力的だといえる。

かつてインターネットは映画の宣伝手法を変えた。しかし、いま起きているのはそれ以上の変化だ。新進気鋭のZ世代監督による『Backrooms』と『オブセッション 災愛』の爆発的な成功は、YouTube発のクリエイターが製作から配給まで主導する、新たな映画時代の到来を示しているのかもしれない。
記事/和田 萌

【参考記事】
- ‘Backrooms’ Director Kane Parsons Is Youngest Filmmaker Ever to Hit No. 1, Curry Barker’s ‘Obsession’ Makes 3rd Weekend History
- Box Office: Curry Barker’s ‘Obsession’ Earns $2.6M Million in Previews
- Backrooms Review Roundup: What Critics Are Saying About A24’s Horror Film
- Kane Parsons’ Backrooms Spells a YouTube Conquest of the Film Biz
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