杉咲花『52ヘルツのクジラたち』で虐待の過去持つ女性を熱演「一瞬でも光を感じて」
2021年の本屋大賞を受賞したベストセラー小説を映画化した『52ヘルツのクジラたち』が1日、全国339館で封切られた。
主演の杉咲花をはじめ、共演の志尊淳、宮沢氷魚、小野花梨、桑名桃李、成島出監督が東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで初日舞台挨拶。
杉咲は、「皆で議論を重ね、骨が折れそうになる日々でしたが、この現場に関われる幸せを感じながら紡いできました」と万感の面持ちで語った。
今回、杉咲が演じるのは、親から虐待を受け傷を抱えた主人公の貴瑚役。
10年来の親友である小野から原作を薦められたタイミングでオファーを受け、「友人として過ごした時間の方がはるかに長い花梨と、いつか深く交わる共演がしたかった。巡り合わせのご縁を感じます」と感慨深げに話した。
小野も、「原作の素晴らしさを残しつつ、映像として新たな魅力を加える一部になれるようにと思いました」と振り返った。
志尊は、トランスジェンダーであることを打ち明けられずに貴瑚に寄り添う役どころで「命を懸けて向き合わなければできなかった作品」と強調。
今月5日に迎える29歳の誕生日をサプライズで祝福され、「20代の最後がこの作品で、30代に入っても僕が歩んでいく中でも背中を押してくれる作品になると思う」と力強く語った。
成島監督は全キャラクターの人生年表を用意し、撮影前に1週間をかけてほとんどのシーンのリハーサルを行った。
宮沢は「皆さんの作品に対する熱量をコンスタントに感じた。もっと高みを目指そうと自然とモチベーションが上がり、撮影当日はすっと入り込めた」と振り返った。
「いろいろなテーマが並んだ作品だが、皆が全力を出し切った演技を楽しんでほしい。それぞれの悩み、喜び、葛藤は届いてくれると思う」と成島監督。
杉咲もこれを受けて、「すがすがしくやり切ったとは手放しでは思っていない。議論が起こると想像しているし、皆さんの声を真摯に受け止めたい」と賛同。
続けて、「この作品が時代を乗り越え、将来見直した時にこんな悲劇が描かれた時代があったと思われたい。私たちは責任を持って届けますので、一瞬でも光を感じていただければうれしい」と呼び掛けた。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元