『スパイダーマン』はなぜ長年成功し続けるのか? トム・ホランド版とシリーズ躍進の理由
『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』の公開を迎え、『スパイダーマン』シリーズが長年にわたり成功を収めてきた理由に、改めて注目が集まっている。多くの大型フランチャイズが苦戦や方向転換を経験するなか、スパイダーマンはなぜ長年にわたり観客を惹きつけ続けているのか。トム・ホランド版の歩みと、シリーズを支える独自の制作体制を振り返る。
トム・ホランド版『スパイダーマン』が築いた成功
トム・ホランドがピーター・パーカー役として初登場したのは、2016年の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』だった。
トニー・スタークに見いだされ、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)へ加わったホランド版ピーターは、従来のスパイダーマン像に新たな魅力をもたらした。
落ち着きがなく、それでいて真面目で親しみやすい。ヒーローでありながら、ごく普通のティーンエイジャーらしい未熟さも持ち合わせている。その等身大のキャラクター像は、多くの観客の支持を集めた。
ホランド主演の単独映画3作品は、興行面でも着実に規模を拡大してきた。
2017年の『スパイダーマン:ホームカミング』は世界興行収入約8億8,000万ドルを記録。続く2019年の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』は約11億3,000万ドル、2021年の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は約19億5,000万ドルを記録した。
作品を重ねるごとに興行成績を伸ばしてきたことは、ホランド版『スパイダーマン』の大きな特徴だ。
『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』に高まる期待
シリーズ第4作となる『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』は、これまでの大作映画とは異なる形で注目を集めている。
現時点で公開されている本作のプロモーションでは、シリーズの未来を左右する大規模な展開や、世界の存亡を懸けた戦いが前面に押し出されているわけではない。また、過去作のキャラクターが次々と登場することを主な売りにもしていない。
それでも観客の期待は高い。
背景には、「スパイダーマンが帰ってくる」というシンプルな魅力があるのかもしれない。
スーパーヒーロー映画全体に対する飽和感が指摘される一方で、スパイダーマンは依然として幅広い世代から支持を集めている。新作への期待は、キャラクターそのものが持つ強さを示している。
ソニーとマーベルが支える独自の共同体制
『スパイダーマン』シリーズの成功は、複雑な権利・制作体制のもとで築かれてきた。
単独映画はソニー・ピクチャーズ傘下のコロンビア・ピクチャーズが配給し、ソニーが製作費を負担する。一方、マーベル・スタジオはクリエイティブ面を担い、スパイダーマンをMCUへ組み込む役割を果たしている。
さらに、2015年にソニーとマーベルの提携を実現させたエイミー・パスカルも、パスカル・ピクチャーズを通じてシリーズの製作を継続。両社をつなぐ重要な存在となっている。
複数の企業や製作陣が関わる体制は、一般的には作品の方向性が分散する要因にもなり得る。しかし、『スパイダーマン』では、それぞれの強みを生かす形で機能してきた。
マーベルも近年は作品ごとに評価が分かれ、ソニーが手がけた『マダム・ウェブ』や『モービウス』、『クレイヴン・ザ・ハンター』などの関連作品も、必ずしも安定した成功を収めているわけではない。
その意味でも、『スパイダーマン』シリーズの好調は、どちらか一方の企業だけによる成果とは言い切れない。
シリーズを支えた脚本家とトム・ホランド
スーパーヒーロー映画では、俳優や監督に注目が集まりやすい一方、脚本家の功績が語られる機会は多くない。
ホランド主演の『スパイダーマン:ホームカミング』を共同執筆し、その後の単独映画でも脚本を手がけてきたクリス・マッケナとエリック・ソマーズは、シリーズの成功を支えた重要な存在だ。
一方で、トム・ホランド自身の演技も、ピーター・パーカーというキャラクターの方向性に影響を与えてきたと考えられる。
通常、脚本は俳優に役柄の演じ方を示す。しかし長期シリーズでは、俳優の表現が次回作以降の脚本や演出に影響を及ぼすこともある。
ホランドが演じるピーターのユーモア、誠実さ、そして年相応の不安定さは、シリーズを重ねるなかでキャラクター像の一部として定着していった。
歴代スパイダーマンのなかで誰が最も優れているかは、ファンの間でも意見が分かれるだろう。しかし、実写版の単独映画シリーズとして、ホランド版が歴代最大の興行的成功を収めていることは確かだ。
『スパイダーマン』が長く愛される理由
実写映画だけでなく、アニメーション作品『スパイダーマン:スパイダーバース』と『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』も、批評面と興行面の両方で高い評価を得た。
2002年にサム・ライミ監督が現代の映画シリーズを始動させて以降、『スパイダーマン』は長期にわたり安定した人気を維持している。
もちろん、すべての作品が同じように評価されたわけではない。2007年の『スパイダーマン3』や、2014年の『アメイジング・スパイダーマン2』には厳しい意見もある。
それでも、シリーズ全体を見れば、成功作の割合は非常に高い。
その理由の1つは、スパイダーマンというキャラクターの普遍性にあるのかもしれない。
DC作品で近い存在を挙げるなら、バットマンだろう。どちらも長い歴史を持ち、さまざまな解釈を受け入れながら、時代ごとに新たな観客を獲得してきた。
ピーター・パーカーが映す「大人になる前」の時間
スパイダーマンは、ヒーローでありながら、完全な大人として描かれることは少ない。
映画版のピーター・パーカーは、多くの場合、大人になる直前の若者だ。希望を持ち、未来に期待しながらも、自分の力や責任に戸惑っている。
そこには、成熟した大人のヒーローが抱える重圧とは異なる魅力がある。
幼すぎるわけでもなく、現実に疲れた大人でもない。恋愛や友情に不器用で、失敗を繰り返しながら成長していく姿は、観客に親しみを感じさせる。
物語の舞台は現代でありながら、ピーター・パーカーにはどこか懐かしさがある。
彼は、誰もがかつて持っていたかもしれない希望や未熟さ、そして「これから大人になる」という感覚を映し出す存在なのだ。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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