デヴィッド・リンチ監督代表作『マルホランド・ドライブ』名シーンの歌手が死去

故デヴィッド・リンチ監督の、カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した作品『マルホランド・ドライブ』(2001年)の象徴的なクラブ・シレンシオのシーンで歌声を披露した歌手レベッカ・デル・リオが死去した。
ロサンゼルス検視局の発表によると、デル・リオは6月23日に自宅で死去した。死因は明らかにされていない。
レベッカ・デル・リオの生い立ちと音楽キャリア
デル・リオは1967年7月10日、カリフォルニア州チュラビスタで生まれ、シンガーソングライターとしてキャリアをスタートさせた。サンディエゴのシーンで注目を集めた後、1989年にロサンゼルスに移住した。
音楽エージェントのブライアン・ラックスの紹介により、デル・リオは伝説的な映画監督デヴィッド・リンチと初めて出会うことになる。デル・リオはデヴィッド・リンチ監督の前で歌を披露し、映画『マルホランド・ドライブ』のあるシーンに参加するよう誘われた。
『マルホランド・ドライブ』での伝説的パフォーマンス
デヴィッド・リンチとの初対面で彼女が歌った楽曲は「Llorando」という、ロイ・オービソンの「Crying」をスペイン語でカバーしたバージョンだった。この楽曲が映画のクラブ・シレンシオのセグメントに影響を与えることとなる。
映画では、デル・リオが感情豊かに歌い、パフォーマンスの終盤で演じるキャラクターが倒れる。このシーンで、キャラクターが口パクだったことが示されるが、実際にはすべてのテイクで本当に歌っていたと、2022年に米メディア『IndieWire』のインタビューで明かしている。
「何度もテイクを重ねました。そして全てのテイクで歌いました。観客が感じられるように、喉の震えと同じ感情を生み出さなければならないと感じていたからです」と彼女は語った。「また、現場にいた(映画の主演である)ローラ・ハリングとナオミ・ワッツにもライブを体験してもらいたかったので、彼女たちに向けて歌いました。ちなみに、デヴィッドは撮影時にライブマイクを使用して毎回聴いていました」
その後の映画出演とキャリア
この印象的な映画での瞬間の後、デル・リオは『サウスランド・テイルズ』(2006年)や『シン・シティ』(2005年)などの映画でも音楽的才能を発揮し続けた。また、2017年には『ツイン・ピークス:ザ・リターン』で再びデヴィッド・リンチ監督作品に参加し、歌声を披露した。
私生活での悲劇
デル・リオの息子フィリップ・C・デマースは2009年に23歳の若さで亡くなっている。
映画史に残る不朽の名シーン
レベッカ・デル・リオの『マルホランド・ドライブ』でのパフォーマンスは、映画史上最も記憶に残るシーンの1つとして語り継がれている。クラブ・シレンシオでの「Llorando」の歌唱は、リンチ監督の幻想的な世界観を完璧に表現した瞬間として、多くの映画ファンの心に深く刻まれている。
彼女の歌声は単なる映画のワンシーンを超えて、芸術作品そのものとして評価され続けている。デヴィッド・リンチ監督の世界観において、音楽が持つ神秘的な力を体現した存在として、レベッカ・デル・リオの名前は永遠に記憶されるだろう。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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