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『エイリアン:アース』『ユー、ミー&トスカーナ』も実践──ハリウッドで加速する環境配慮型撮影

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『エイリアン:アース』『ユー、ミー&トスカーナ』も実践──ハリウッドで加速する環境配慮型撮影
『ユー、ミー&トスカーナ(原題)』 写真:Giulia Parmigiani/Universal Pictures
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ハリウッドでは今、映画やドラマ制作の裏側で環境負荷を抑える取り組みが急速に広がっている。太陽光発電や電動車両、リサイクル素材の活用など、画面には映らない部分での変化は大きい。大作映画から人気シリーズまで、制作現場は持続可能性への転換期を迎えている。

ハリウッドで進む環境配慮型撮影の現在

2019年にロマンティックコメディ『マリー・ミー』を手がけたキャット・コイロ監督は、劇中で再利用可能な水筒やステンレス製ランチボックスを登場させるなど、環境配慮のメッセージを盛り込んだ。しかし当時は制作現場そのものの環境負荷を減らす手段が十分ではなかったという。

それから数年で状況は大きく変わった。2023年にはユニバーサル・ピクチャーズが制作の全工程で環境配慮を推進する「GreenerLight」プログラムを開始。同年にはディズニーNetflixが、ディーゼル発電機の代替となるクリーン電力の普及を目指す「Clean Mobile Power Initiative」を立ち上げた。

業界団体サステナブル・エンターテインメント・アライアンスのサム・リードは、太陽光や蓄電池などの技術進歩により、映画制作でもクリーンエネルギーが実用段階に入っていると指摘する。実際、2025年には279本の映画・ドラマが環境メディア協会(EMA)からグリーン認証または最高評価のゴールド認証を受けた。

航空移動など依然として課題は残るものの、ハリウッドは確実に持続可能な制作へと舵を切りつつある。

環境配慮型撮影を実践する注目作品

『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』(HBO)

『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』
『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』 写真:Steffan Hill/HBO

北アイルランド元経済相から「持続可能性への取り組み」を評価された本作は、82日間の撮影にサステナビリティ担当者とコーディネーターを配置した。

エネルギー
制作全体のカーボンフットプリントの最大要因が化石燃料であると特定し、100kVAのディーゼル発電機を電力供給設備に置き換えたことで、約1,950万トンのCO2排出を回避。さらに、蓄電システムと水素化植物油(HVO)を併用し、約45,000ガロンの化石燃料使用を削減した。

素材
アルミ製の再利用可能ボトルの導入により、108,080本の使い捨てプラスチックボトルを削減。セットには再生木材を使用し、購入した合板は100%が持続可能な素材(うち67%がFSC認証)だった。

追加ポイント
撮影で出た馬糞は、主要ロケ地であるグレナーム城の庭園の肥料として再利用された。

『エイリアン:アース』(FX)

『エイリアン:アース』
『エイリアン:アース』 写真:Patrick Brown/FX

タイで撮影された作品として初めてEMAゴールド認証を取得し、同国で最大規模のサステナビリティ専任チームを備えた制作となった。

エネルギー
ディズニーの資金支援によりモバイル蓄電システムを導入し、EVミニバンも使用。導入されたバッテリーは後にタイ国内の別作品でも再利用された。

素材
13のスタジオで82のセットを構築し、多くに再利用素材を使用。発泡スチロールは100%リサイクルされ、キャスト・スタッフには1,600本以上の再利用ボトルを配布、食事も再利用食器で提供された。

追加ポイント
撮影期間中にビーチ清掃活動を実施。

『全部、彼女のせい』(Peacock)

『全部、彼女のせい』
『全部、彼女のせい』 写真:Sarah Enticknap/PEACOCK

ゴールデングローブ賞にもノミネートされたPeacockのドラマシリーズで、制作現場には専任のサステナビリティ部門が設けられ、NBCユニバーサルの環境配慮基準に基づいた取り組みが実施された。主演のサラ・スヌークは「実際に実現可能であることを示すことが重要だと思う」と語っている。

エネルギー
撮影はメルボルンのDocklands Studiosで行われ、同スタジオは100%再生可能エネルギーで稼働。本作のために初のEV急速充電器が設置され、劇中・舞台裏の両方で電動車両の使用が可能となった。さらに、照明機材の約70%にLED技術が採用され、エネルギー消費の削減に寄与した。

素材
美術部門では、新たに合板を購入する代わりに、リサイクル複合パッケージを圧縮して作られたシート素材「saveBOARD」を試験導入。撮影終了時には40トン以上の資材を分類し、再利用や寄付が可能なものを選別した。

追加ポイント
オーストラリアの非営利団体Wilderlandsを通じて15,000バイオロジカル・ユニットを購入し、国内15,000平方メートルの土地の恒久的な保全に貢献した。

『ザ・ボローズ』(Netflix)

『ザ・ボローズ』
『ザ・ボローズ』 写真:Courtesy of Netflix

5月21日に配信開始予定のNetflixの超自然ドラマシリーズ。本作は同社のアルバカーキ・スタジオで撮影され、施設に備えられたモバイルバッテリーや太陽光発電トレーラーを活用。米国内のNetflix作品としては過去最高レベルの排出削減を達成した。

エネルギー
ベースキャンプは太陽光発電と電力網を併用して運用され、ディーゼル発電機への依存を75%以上削減。約13,000ガロンの燃料使用を回避した。ショーランナーのジェフリー・アディスとウィル・マシューズは、「ディーゼル発電機は騒音や排気、設置の手間といった問題があるが、モバイルバッテリーや太陽光、EVの導入によって、燃料削減だけでなく撮影場所の自由度が増し、撮影終了もスムーズになった」とコメントしている。

追加ポイント
映画制作向けに開発された電動ボックストラック「Shorty 40」を初めて試験導入した作品となった。

『ディセンダント:ウィキッド・ワンダーランド』(ディズニー)

『ディセンダント:ウィキッド・ワンダーランド』
『ディセンダント:ウィキッド・ワンダーランド』 写真:Disney+

今夏配信予定のシリーズ第5作で、クラシックなヴィランの子どもたちを描くテレビ映画。環境配慮の取り組みによりEMAゴールド認証を取得している。

エネルギー
バンクーバーで撮影され、EVやバッテリーパック、電力網への接続により化石燃料の使用を削減した。

素材
使い捨てのペットボトルは廃止され、給水ステーションと再利用ボトルが導入された。

追加ポイント
セット資材は廃棄されることなく、地元の非営利団体へ寄付された。

『ザ・ディプロマット』(Netflix)

『ザ・ディプロマット』
『ザ・ディプロマット』 写真:Liam Daniel/Netflix

ケリー・ラッセル演じる外交官ケイト・ワイラーの人間ドラマで知られる本作は、制作面でも革新的な取り組みを行っている。

エネルギー
Netflix作品として初めて、3シーズン連続で水素エネルギーを導入。複数のディーゼル発電機を代替し、さらに太陽光トレーラーや蓄電池も併用して制作が行われた。

『デューン 預言』(HBO)

『デューン 預言』
『デューン 預言』

本作には、環境配慮を契約条件とする「グリーンライダー」を持つ俳優が4人参加。制作はサステナビリティ・コンサル企業と連携し、HBOの環境配慮プログラムを導入した。

エネルギー
EVの使用やディーゼル発電機のバッテリーへの置き換えにより、25.5MTのCO2排出を削減した。

素材
余剰食品は生活困窮者向けの慈善団体へ寄付され、食品廃棄物は動物保護施設に提供。さらに、ハンガリーのデザイナーやリサイクル企業と連携し、2トンの繊維素材をアップサイクルした。

追加ポイント
スタッフの一部は植林プロジェクトに参加し、撮影スタジオ近郊に約1,000本の木を植樹した。

『パラダイス』(Hulu)

『パラダイス』
『パラダイス』 写真:Disney/Ser Baffo

地球環境の崩壊リスクをテーマにしたディストピアドラマで、制作現場でも環境負荷軽減に取り組み、EMAグリーン認証を取得した。

エネルギー
劇中に登場する車両にはEVを使用し、制作でも再生可能ディーゼル燃料を活用した。

素材
主演のジュリアンヌ・ニコルソンがキャスト・スタッフに再利用ボトルを配布。さらに、Paramountスタジオのリサイクルプログラムと、制作向け廃棄物管理サービスを提供するReel Wasteのシステムを導入した。

追加ポイント
新規セット建設を抑えるため、ホワイトハウスのセットは既存の資材をレンタルして使用した。

『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』(ディズニープラス)

『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』
『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』 写真:Disney/David Bukach

ファンタジー・アドベンチャー作品で、制作においても環境配慮を重視。プロデューサーのダン・ショッツは「海の神の息子を描く作品として、海洋保護は責任でもある」と語っている。

エネルギー
可能な限りディーゼル発電機をモバイルバッテリーと電力網に置き換え、環境負荷を低減。こうした取り組みにより、クリーンエネルギー導入を条件とするバンクーバー市の許可料割引(50%)も受けた。

素材
使い捨てプラスチックボトルを完全廃止し、複数の分別リサイクルシステムを導入。使用可能な資材は地元団体へ寄付された。

『ユー、ミー&トスカーナ(原題)』(ユニバーサル)

『ユー、ミー&トスカーナ(原題)』
『ユー、ミー&トスカーナ(原題)』 写真:Giulia Parmigiani/Universal Pictures

非営利団体Habits of Wasteによる「Lights, Camera, Plastic?」イニシアチブに参加し、劇中でも環境配慮を描写。ハル・ベイリー演じるキャラクターが電気調理器を使用するなど、具体的な行動が盛り込まれている。

エネルギー
ハイブリッド車の使用や電力網の活用により化石燃料依存を低減。照明の80%にLEDを採用し、結果として同規模作品と比べて約40%低い排出量を実現した。

素材
堆肥化可能な食器や再利用ボトルの導入により、62,000点以上の使い捨て製品の使用を回避した。

追加ポイント
撮影現場で提供された食事の50%以上がベジタリアンメニューだった。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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