『ルックバック』で注目の子役・七瀬ふうり&岡田六花が撮影秘話を語る「是枝監督のアドバイスは別格」
藤本タツキの大ヒット漫画を是枝裕和監督が実写化した『ルックバック』。小学校で出会った藤野と京本がひたむきに漫画に打ち込み、成長していく13年間を描く。藤野役の出口夏希と京本役の蒔田彩珠がダブル主演を務めている。
そして本作では、ニュースターの2人も大きな注目を集めている。藤野の幼少期を演じた七瀬ふうり、京本の幼少期を演じた岡田六花だ。2人はともに2014年1月生まれの12歳で、生年月日はわずか1日違い。撮影開始時は11歳の小学5年生だった。
演技経験も性格も全く異なる2人。劇中の藤野と京本と同じように、七瀬と岡田も『ルックバック』の撮影現場で初めて出会った。そんな2人の姿を、子役の自然な演技を引き出すことに定評のある是枝監督が丁寧に描き出した。
2人は現地時間9月7日(月)、第83回ヴェネツィア国際映画祭の公式上映に参加した。その翌日、米『ハリウッド・リポーター』は、ヴェネツィアのリド島で2人にインタビューを行った。海外メディアの取材を受けるのは、ともに今回が初めて。スクリーンで瑞々しい演技を見せた次世代のスター2人が、作品への思いや撮影秘話、今後の目標を語った。
『ルックバック』で大注目の2人の子役――性格も演技経験も真逆、でも“大の仲良し”
岡田は乳幼児の頃にデビューし、映画やテレビドラマ、CM、舞台などで幅広く活躍してきた。「物心つく前からこの仕事をしているので、今ではもう日常のようなものです」と本人は語る。
是枝監督は、豊富な演技経験に裏打ちされた落ち着きに加え、京本の故郷・秋田県の方言を習得できるという確信から、京本役に岡田を選んだ。
一方の七瀬は、これまで演技経験のない新人俳優だが、天真爛漫な性格と、物怖じしない自信を買われて抜擢された。「初日に六花を見た時、『本当にそんなに上手なのかな?』と思ったのを覚えています。でも実際に紹介されて話してみたら、『この子、本当に面白い』と思いました」
撮影現場では1日違いで12歳の誕生日を迎え、2人はすぐに親友同士になったという。ヴェネツィアでの『ルックバック』公式上映の頃には、片時も離れないほどの仲になっていた。
レッドカーペットでは、息の合ったポーズを決めたり、一緒にジャンプしたりと、仲の良さを披露。レトロな雰囲気の衣装と愛らしい振る舞いも話題となり、さまざまなファッションメディアの「映画祭ベストドレッサー」リストにも選ばれた。
岡田は、「ふうりがそばにいなかったら、この経験を乗り越えられたかどうか分かりません。きっとすごく怖かったと思うけれど、彼女と一緒だったから、こんなに楽しい時間になったんだと思います」と、ヴェネツィアでの経験を振り返った。
新人・七瀬ふうりが「藤野」になるまで――オーディション秘話と“是枝流”撮影法
是枝監督は、穏やかな人間味あふれる描写に加え、子役から印象的な演技を引き出す手腕でも知られている。
是枝監督の名を世界に知らしめた『誰も知らない』(2004年)では、撮影当時12歳だった柳楽優弥が、第57回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞。史上最年少かつ日本人として初の受賞者となった。
その後も、子どもの取り違えを描いた『そして父になる』(2013年)、第71回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『万引き家族』(2018年)、第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィア・パルム賞を受賞した『怪物』(2023年)などで、子どもたちの繊細かつ自然な演技をスクリーンに映し出してきた。

七瀬は、是枝監督とプロデューサー陣によるオーディションで、「何を求められているのか分からなかった」と振り返る。演じるシーンが事前に送られてくることはなく、当日は自然体で臨むよう伝えられていたという。それはオーディションというより「面談」に近いものだった。
是枝監督は米『ハリウッド・リポーター』のインタビューに応じた際、オーディションでの七瀬の印象をこう振り返っていた。
「彼女がオーディション会場に入ってきた瞬間に、映画で皆さんが目にする『藤野』が、もうそこにいたんです。オーディションに立ち会っていたスタッフ全員が、『わあ、藤野が来た』というような反応でした。これまで日本で多くの子役たちと仕事をしてきましたが、これほど最初からキャラクターとして完成されている子に出会ったのは初めてでした」
七瀬はオーディション時の是枝監督について、「監督が部屋に入ってきた瞬間、じっくりと時間をかけて、全てをコントロールしてくれる雰囲気があり、とても安心しました。私にも大人に接するように話しかけてくれましたが、とても優しくて穏やかでした」と語る。
撮影が始まると、是枝監督は経験の浅い七瀬に各シーンの意図を説明したうえで、カメラを回す直前にセリフを渡すという方法を取った。
「シーンの核となる考え方を伝えて、どうしてほしいかを教えてくれました。でも、そのあとに『これについてどう思う? 良いアイデアだと思う? 他に何か試してみたいことはある?』と聞いてくれるんです。撮影が始まる前は、現場の雰囲気がどんな感じになるのか少し不安でした。でも、一度も緊張することはありませんでした」
2人が『ルックバック』の世界に入るまで――作画シーンの裏側
撮影準備に入る前、是枝監督は出演者たちに対し、『ルックバック』の原作漫画を読むこと、アニメーション映画(2024年)を観ることを禁止したという。
代わりに、2人がこれから参加する作品の雰囲気を感じ取れるよう、是枝監督のチームは『万引き家族』と『怪物』を両親と一緒に観るよう勧めた。
「どちらの作品にも、普通の映画では出会えないような、心に残る何かがありました。美しい作品だと思いました」と岡田。
原作漫画では藤野を主人公に据えており、藤野と京本の青春時代が繊細なタッチで描かれている。藤野は、東北の小さな町にある小学校で、漫画の上手さでちょっとした人気を集めている活発な少女。そんな藤野は、ほとんど外に出ることのない同級生・京本が描いた漫画を読み、「偉大な漫画家になりたい」という情熱を燃やしていく。
京本の作品には、驚くほど大人びた洗練さがあった。2人の間のライバル関係は、互いを深く思いやる友情へと変わり、やがてタッグを組んで漫画を描くようになる。藤野がキャラクターを、京本が背景を担当し、2人は「藤野キョウ」というペンネームでプロの漫画家デビューを目指す。しかし、胸を締め付けるような別れを経て、2人はそれぞれの道を歩んでいく。
本作は東北地方でロケを行い、約1年をかけて撮影された。そこには、移り変わる四季の美しさと、成長に伴う戸惑いや喜び、悲しみ、そして地方に住む子どもたちの無垢さが、丁寧に描き出されている。成長した藤野を出口夏希、京本を蒔田彩珠がそれぞれ演じている。

撮影に入る前、七瀬と岡田には本格的な作画の練習が求められた。七瀬は人物画、岡田は背景や風景を描く練習を重ねた。加えて、岡田は秋田弁の方言指導も受けた。
是枝監督は2人を東京の書店へ連れて行き、大量の画集や画材を購入。その後、2人はオンラインの絵画レッスンを受講し、定期的にプロの漫画家からも指導を受けたという。
豊富な演技経験を持つ岡田だが、「これまで一緒に仕事をしてきた監督の方々もとても親切でしたが、是枝監督は別格です」と語る。
「是枝監督は、アドバイスの仕方がとても上手です。最初の作画シーンの一つを撮影していた時、『音楽を聴く時のように、ペンで紙をこする音に全神経を集中させて』と言われたのを覚えています。それが不思議と役に立ちました」
若きスター2人が『ルックバック』から受け取ったもの「私自身もそうありたい」
『ルックバック』は何よりもまず、アーティストが生まれていく過程を描いた物語だ。若き主演俳優の2人は、作品を通して感じたことを、これからのキャリアに生かしていきたいと語る。
「私が演じた藤野は、漫画家になろうと決意してから、並外れた意志を持ち続けています。私自身もそうありたいと思っています。次のオーディションに向かうときには、彼女の存在を胸に、絶対的な自信を持って臨みたいです」と、七瀬は胸を張って語った。
幼い頃から演技の世界に身を置いてきた岡田も、『ルックバック』を通して、自分が歩んでいく道への向き合い方が変わったと語る。
「京本は自分自身の内面を見つめ、どんな作家になりたいのかを深く考えることができる人物です。私もそれを実践してみたいと思っています。そうやって、演技を通じてより高みを目指していきたいと思っています」
映画『ルックバック』は全国の劇場で公開中。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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