ヘンリー王子、軍務を「悲しみからの逃避」にしていた──パニック発作の経験を告白
ヘンリー王子が、英国陸軍での軍務と、アフガニスタンからの帰国後に経験したパニック発作について語った。
ヘンリー王子はオンライン教育プラットフォーム「MasterClass」の新講座「Redefining Grief: Building Resilience Through Loss(原題)」で、神経科学者メアリー=フランシス・オコナー博士と対談。母ダイアナ元妃を亡くした後、悲嘆から気をそらすかのように軍務に身を投じたことや、後に心身の不調に直面した経験を明かした。
ヘンリー王子、パニック発作を告白──20歳で英国陸軍へ
ヘンリー王子は20歳で英国陸軍に入隊。自身にとって軍務は、「完璧な気晴らし」だったと振り返る。
目の前の任務に集中している間は、ほかのことを考える必要がなかった。極限状態のなかで、自分が想像していなかったことまでできるようになったといい、当時のアドレナリンに満ちた状態を「スーパーパワー」のように感じていたという。
アフガニスタンには2度派遣された。しかし、2013年に2度目の任務を終えて帰国すると、状況は変わった。「もう次の任務がなかった」ことで、それまで抱えていたものが一気に押し寄せてきたという。
「アフガニスタンだけが原因ではなかった」
ヘンリー王子は、帰国後に経験した心的外傷後のストレスについて、アフガニスタンでの経験そのものだけが原因だったわけではないと説明する。
戦場で目にしたものや経験したことが、むしろ過去に抱えていた別のトラウマを呼び起こす「引き金」になったと感じたという。
つまり、戦場で新たに生まれたものだけではなく、長い間自分の内側に蓄積されていたものが表面化した。
母ダイアナ元妃の死を含め、処理されないまま残っていた悲嘆が、別の経験と結びついて現れたのだった。
シャツの襟を締めるだけで「息ができない」
症状は、日常の何気ない瞬間にも現れるようになった。ヘンリー王子は、シャツを着るというごく普通の行為を例に挙げる。襟元が締まる感覚が、文字通り「息ができない」ように感じられたという。
さらに、仕事へ向かう車の中でパニック発作を起こすこともあった。その頃になって初めて、「これはもっと大きな問題がある。ほかに調べるべきことがある」と気づいたと語る。
公務でも「汗をかくのが怖かった」
パニック発作は、王族としての公務にも影響を及ぼした。公の場に出ること自体が、最初から最後まで「絶対的なパニック」を引き起こしていたという。
車から降りること、待ち構えるカメラ、誰に話しかければいいのか、何を言えばいいのか。そして、自分の状態を周囲に気づかれるのではないか――。
なかでも大きな不安だったのが、「汗をかくこと」だった。乱れたように見える自分を人々に見られ、それが何なのかを短い言葉で説明できないことが怖かったという。「まるでボクシングの試合を終えたばかりのように感じた」と、当時の状態を振り返った。
カナダ移住後、アドレナリンが切れて「何もできなくなった」
ヘンリー王子が本格的に自分の状態と向き合ったのは、2019年末だった。妻のメーガン妃、長男アーチーとともにカナダへ移り、環境から距離を置いて考える時間を持った。
そこで、それまでとは異なる感覚を経験する。ストレスの多い環境から離れたことで、それまで身体を満たしていたアドレナリンが急激に下がったように感じたという。
「家の中で何もできない」と感じ、約2週間にわたってうつ状態になったことも明かした。
「アドレナリンがなければ機能できない」と感じるほどだったという。
今回のMasterClassでヘンリー王子が語ったのは、悲嘆が単に心の問題にとどまらず、身体や日常生活にも影響を及ぼし得ることを、自身の経験を通して語った。
母の死をきっかけに抱えた悲しみを、軍務という強烈な刺激によって押し込めようとした。
しかし、任務が終わったとき、それまで抑えていたものが別の形で現れた。
ヘンリー王子は、その経験を振り返りながら、悲嘆から逃げるのではなく、自分の内側にあるものと向き合うことの重要性を語っている。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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