ホーム » BUSINESS » 日本コンテンツの海外展開政策「IP360」の効果とは?

日本コンテンツの海外展開政策「IP360」の効果とは?映画・アニメ・テレビ関係者が抱く期待と懸念

/ / / /
日本コンテンツの海外展開政策「IP360」の効果とは?、『チェンソーマン レゼ篇』、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』、『ゴジラ-1.0』、『君の名は。』
『チェンソーマン レゼ篇』、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』、『ゴジラ-1.0』、『君の名は。』 写真:Toho
スポンサーリンク

今年7月、日本政府は重点的に投資する「戦略17分野」を打ち出した。その中には、半導体やAI、造船などと並び、コンテンツ産業も含まれている。この政策では、選定した17分野全体で、2040年までに官民合わせて370兆円を超える投資を行う目標が掲げられた。

その一環として、経済産業省が主導する「IP360」では、2033年までに日本発コンテンツの海外売上高を20兆円に引き上げることを目指している。

しかし、第39回東京国際映画祭のコンテンツマーケット「TIFFCOM 2026」に出展した日本企業の関係者たちは、この政策に懐疑的な見解を示している。これまでの政府の支援に対する不満や失望から、日本の映画やテレビ番組、IP(知的財産)を海外のバイヤーに売り込む海外セールス担当者の期待は薄い。

ある中規模の映画会社で海外セールスを担当する関係者は、次のように語る。

「以前にもクールジャパン政策はあったが、日本が韓国のように大規模な資金を業界へ投じたことは一度もない。アヌシー国際アニメーション映画祭への出品や、見本市への参加費用を補助する制度はあった。しかし、今回の支援も大手企業や小規模なベンチャー企業に集中し、私たちのような中規模の会社には届かないと感じている」

海外の映画・映像プロジェクトが、日本国内で撮影する際に利用できる制作支援制度には、最低予算額の要件が設けられている。これと同様に、国内の実写映画が「IP360」制度によって海外展開の支援を受ける場合にも、「製作費8億円以上」という基準をクリアしなければならない。

しかし、製作費8億円以上となれば、大手映画会社が手がける大作映画の規模に含まれる。朝日新聞の報道によれば、ミニシアター系映画は製作費1億円以下の作品がほとんどで、2018年頃に製作された邦画の平均製作費は約3.6億円となっている。つまり、多くの実写邦画は8億円の基準をクリアできず、「IP360」の支援を受けられないということになる。

この関係者は、さらにこう指摘する。

「政界にも省庁にも、新しい人材が必要だ。経済産業省は、業界の専門知識を持つ人材をもっと積極的に取り込むべきだろう。また、海外市場への理解を深めるため、外国人とも連携する必要がある。大手出版社の中には、すでにそうした取り組みをうまく進めているところもある」

漫画やアニメを含む北米向けライセンス事業を担当する大手出版社の関係者は、「今回の施策がどのような影響をもたらすかを判断するには、まだ時期尚早だ」と語る。

「ストリーミングサービス各社の後押しもあり、当社の売上はもともと伸びている。現時点では政府は関与していないが、施策はまだ始まったばかりだ。実際に現場まで支援が届くまで、時間がかかるだろう」

一方、別の大手出版社でセールスを担当する関係者は、「これまでにもさまざまな支援策があったが、どれも大きな効果はなかった」と厳しい評価を下した。

しかし、今回の政策に前向きな見解を示す関係者もいる。放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ)の杉山真喜人理事は、次のように語った。

「この業界に30年以上携わってきたが、この10年、特にここ5年ほどで国内中心の意識が薄れ、業界関係者の意識が変わってきたと感じる。『IP360』は、制作現場の人々の視野を広げるきっかけになっていると思う」

かつてTBSで国際セールスを担当した経験も持つ杉山氏は、今回の政策に期待を寄せる理由について、こう説明する。

「これまでにも政府の委員会やさまざまな取り組みに関わってきたが、補助金制度自体は何年も前から存在していた。ただし、いずれも単年度予算に基づく短期的な支援だった。今回は長期的な視点が取り入れられており、省庁間の対立も以前より少なくなっている」

その一方で、経済産業省が公表した支援制度の申請ガイドラインには、依然として課題も残っている。それは、これまでの支援制度でも障壁となっていた手続きの煩雑さや不透明さだ。別の大手スタジオの国際セールス担当者は、次のように話した。

「これまでの補助金や支援制度は、申請手続きがどれも非常に複雑で、ヒアリングなどにも膨大な時間を取られた。政府がコンテンツ産業を真剣に捉えてくれるのはありがたいが、新しい施策では、どのような基準で支援対象となる作品を選ぶのかが気になる。これまでは、本当に支援を必要としている中規模予算の作品よりも、有名な俳優や監督が参加する作品が選ばれる傾向にあった」

別の大手企業で国際セールスを担当する関係者も、こうした懸念を示している。

「支援を受けるためのハードルが非常に高い。全ての企業や作品に支援を提供すべきだと言うわけではないが、申請の準備期間が足りないことも多い。日本人である私たちでさえ、申請書類の内容を理解するのは非常に難しい。政府はいろいろな施策を打ち出しているが、それらが本当に実行されるかどうかはわからない。正直なところ、あまり期待はしていない」

日本発コンテンツの海外展開を後押しするという政府の大きな目標が掲げられる一方、現場の関係者からはさまざまな課題が指摘されている。支援の対象や申請手続き、支援の効果などの疑問をいかに解決し、制度を現場へ浸透させるかが問われそうだ。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

【関連記事】

スポンサーリンク

類似投稿