スピルバーグはもう古い?『オブセッション 災愛』『Backrooms』で浮かぶZ世代の映画観
スティーヴン・スピルバーグは『ジョーズ』『E.T.』『インディ・ジョーンズ』シリーズなど、映画史に残る数々の名作を生み出してきた。しかし近年、映画業界ではYouTube出身の若手監督たちが躍進し、新たな時代の到来を感じさせている。Z世代の映画ファンは、映画界の巨匠をどのように見ているのだろうか。
Z世代はスティーヴン・スピルバーグと彼の映画をどう見ているのか
2026年夏の映画界では、20代のYouTubeクリエイターであるカリー・バーカー監督とケイン・パーソンズ監督が大きな話題をさらった。
バーカー監督のホラー映画『オブセッション 災愛』は、わずか75万ドルの製作費ながら世界興行収入3億3,400万ドルを突破。さらにパーソンズ監督の『バックルームズ(原題:Backrooms)』は、A24史上最大のオープニング成績を記録し、21歳にして全米興行収入ランキング首位を獲得した史上最年少監督となった。
こうした成功は、ハリウッドにおける世代交代の象徴とも受け止められている。
ニューヨークの学生たちに話を聞いたところ、多くの若者は最初こそスピルバーグ作品をすぐに思い浮かべられなかったものの、『ジョーズ』や『E.T.』、『インディ・ジョーンズ』のタイトルを挙げるとすぐに認識したという。
ロチェスター大学に通う21歳のケイティ・ヤングさんは、『ジョーズ』について「幼い頃に強烈な衝撃を受けた作品だった」と振り返る。
一方で、スピルバーグ作品との出会いは親やベビーシッターの勧めによるものが多かったと語り、「私たちの世代はインディペンデント作品やや、YouTube出身の監督、低予算映画に惹かれる傾向がある」と指摘する。
マーベル疲れとCG疲れが若者の価値観を変えた
近年のハリウッドでは、大規模フランチャイズ作品やCGを多用した超大作が市場を席巻してきた。
しかし、インディアナ大学を卒業した21歳のノア・ブレアさんは、「特に若い世代はCG映画に疲れている」と話す。
「マーベル作品の氾濫によって、大作映画を映画館で観たいという気持ちが薄れてしまった人も多い」
ブレアさんによれば、Z世代が求めているのは巨大なVFXスペクタクルではなく、独創性や実写・実践的な特殊効果を重視した映画作り、そして新しい才能だという。
「マーベルやDC作品、近年規模が拡大したA24作品よりも、良い物語を持つオリジナル映画の方が魅力的に映る」
こうした傾向は、『オブセッション 災愛』や『バックルームズ(原題:Backrooms)』の成功にもつながっているとみられる。
YouTube世代が支持する“身近な監督”
Z世代が若手クリエイターを支持する理由のひとつとして、SNSによる距離の近さも挙げられる。
スウェーデンから訪れていた30歳のヨシュア・カルンボ氏は、「スピルバーグと直接会話することは現実的ではないが、カリー・バーカーはSNSでコメントに返信してくれる」と語る。
かつての映画監督は遠い存在だったが、現代では観客とクリエイターが直接つながることが可能になった。
また、『オブセッション 災愛』では無名に近い俳優陣が主要キャストを務めていたことも支持を集めた理由のひとつだ。
カルンボ氏は、「最近は有名スターばかりが出演する作品よりも、初めて見る俳優が活躍する映画に新鮮さを感じる」と話している。
それでもスピルバーグを超える存在は現れていない
もっとも、今回取材を受けた若者たちの多くは、スピルバーグの功績そのものを否定しているわけではない。
『ジョーズ』でサマー・ブロックバスターの概念を築き、『E.T.』や『シンドラーのリスト』、『プライベート・ライアン』などジャンルを超えたヒット作を長年にわたって生み出してきた実績は、依然として別格と受け止められている。
ニューヨーク大学映画学科を卒業した22歳のハンナ・スペリングさんは、「次のスピルバーグになるためには、彼と同じだけの作品を作り、そのすべてをヒットさせなければならない」と語る。
『オブセッション 災愛』の成功についても、「カリー・バーカーは非常に才能があるが、1本の大ヒットだけではスピルバーグと比較することはできない」と評価した。
YouTube出身の若手監督たちが映画界に新風を吹き込んでいる一方で、半世紀以上にわたりハリウッドを牽引してきたスピルバーグの存在感は依然として大きい。Z世代が新しい才能に熱狂する時代になっても、そのキャリアと功績に肩を並べる存在は、まだ現れていないのかもしれない。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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