『プラダを着た悪魔2』『F1®/エフワン』『007』……メルセデスやGMが進める“映画×自動車”マーケティングの現在地
映画の興行収入が伸び悩む中、自動車ブランド各社は映画への車両提供を行い、プロダクトプレイスメント(作品の中に商品を登場させる広告手法)を進めている。本記事では、そんな「映画と自動車メーカー」の関係についてひもといていく。
『プラダを着た悪魔2』で存在感を放つメルセデス
公開中の『プラダを着た悪魔2』に登場する雑誌『ランウェイ』の編集長ミランダ・プリーストリー(演:メリル・ストリープ)は、打ち合わせや撮影現場、さらにはメットガラのようなイベントへ向かう際、その地位にふさわしい車で送迎される。
その車とは、販売価格3,000万〜4,000万円台の「メルセデス・マイバッハ Sクラス」だ。メルセデスはディズニーと交渉を重ね、大規模なプロモーション戦略の一環として、この車両を同作に提供した。

メルセデスのチーフ・マーケティング・オフィサーであるメロディ・リー氏は、「完璧な組み合わせだと確信していました」と語る。第1作のキャストが再集結した『プラダを着た悪魔2』は、大ヒットがほぼ確実視され、世界興行収入は推定6億ドル(約954億円)を突破している。
さらに、映画の公開時期と、メルセデスの最新モデルの発売時期が重なったことも功を奏した。何より、ターゲット層が一致していたという。リー氏は「20年前に第1作を観ていた人たちが成長し、今まさに私たちの理想的な顧客層になっています」と説明する。
現在、自動車メーカーと映画スタジオには、それぞれブランドとエンターテインメントのコラボを進める専門チームが存在し、互いに利益を生むパートナーシップを模索している。最も理想的な方法は、映画の企画段階から連携し、製品を自然に溶け込ませることだ。
ディズニーでマーケティング・パートナーシップなどを統括する副社長タイ・アーヴィン氏は、「車は単なる背景ではありません。衣装やセットと同じように、キャラクターの個性を表現する重要な要素です」と語る。
さらに同氏は、「綿密に設計されたコラボレーションは、スクリーンを超えて展開できる」と説明した。メルセデスは、『プラダを着た悪魔2』とのコラボを前面に押し出した大規模広告キャンペーンを実施した。ここには、続編の話題性を高めると同時に、車そのものも“文化的現象”として広げたいという狙いがあった。
『007』から『バービー』まで!映画を彩る名車たち
他社も同様の取り組みを進めている。GM(ゼネラルモーターズ)でエンターテインメント・マーケティングを統括した経験を持つサラ・シュローデ氏によると、シボレーは映画『バービー』(2023年)と緊密に連携を取った。
出演したアメリカ・フェレーラとライアン・ゴズリングは、それぞれ2024年型シボレー・ブレイザーSSとハマーEVに乗車した。また、バービー役のマーゴット・ロビーには、ヴィンテージ仕様のピンク色のコルベットを提供し、マテルの「ドリームカー」の歴史を復活させた。

自動車のプロダクトプレイスメントにおいて、『007』シリーズは最も象徴的な作品と言えるだろう。フォードのグローバル・ブランド・エンターテインメント責任者アレッサンドロ・ウジエリ氏によれば、アストンマーティン、ジャガー、ランドローバー、フォードはいずれも『007』シリーズと協力し、ジェームズ・ボンド本人やボンドガール、さらには悪役たちの愛車として、最新モデルを登場させた。
映画と自動車メーカーのコラボは、市販モデルの車両提供だけとは限らない。ポルシェは『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019年)で宇宙船デザインの開発に協力した。
また、昨年公開の『F1®/エフワン』では、ブラッド・ピット演じるドライバーが所属する架空のレーシングチーム「エイペックス」のスポンサーをメルセデスが務め、多くの車両を提供した。

さらに、日本で6月3日(水)から配信されるアニメ映画『GOAT/ゴート 史上最高をめざせ!』にも、同社から2つの車種が登場している。リー氏は、「メルセデス・ベンツがアニメ映画に登場すると聞いて、意外に思う人もいるでしょう。でも、それも次世代へのアプローチ戦略の一部なのです」と語った。
「映画・車・SNS」を連動させる次世代広告戦略
リー氏によれば、映画とのパートナーシップはブランドへの“親近感”や“共感”を生み、最終的には購買行動へとつながるという。「ある調査では、視聴者の4分の3が広告を見た後にブランドを検索し、その半数以上が実際に商品を購入したという結果が出ています」
興行収入が低迷する現在でも、こうした提携の重要性は変わらない。GMのシュローデ氏は、「プロダクトプレイスメントは、ネット広告と異なりスキップもブロックもできませんし、ストリーミング配信を通じて長期間視聴され続けます」と指摘する。
一方で、視聴者の関心が分散し、劇場動員数も減少するなか、プロダクトプレイスメントにはより強いインパクトが求められているという。「求められる基準は、以前より遥かに高くなっています。多くの場合、知名度の高い既存IPか、新規IPの場合は大胆な革新性が求められます」と彼女は付け加えた。
こうした背景から、自動車メーカーと映画スタジオは単発施策ではなく、包括的な戦略としてプロダクトプレイスメントを行うようになっている。
「一度きりの取り組みではなく、それを中心にエコシステム全体を構築するのです」とシュローデ氏は説明する。一例として、SNS向けコンテンツ、舞台裏映像、キャストとのタイアップ、映画の世界観と実在のブランドを結びつけるデジタル施策などがある。
シュローデ氏は、「これらの施策が成功したときの反響は、非常に大きいです。GMと『バービー』のコラボレーションでは、SNSエンゲージメントが通常の投稿の10倍に達しました」と語った。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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