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『DIGGER/ディガー』米レビュー|トム・クルーズ×イニャリトゥ、気候危機を描く大胆な風刺劇

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『DIGGER/ディガー』米レビュー|トム・クルーズ×イニャリトゥ、気候危機を描く大胆な風刺劇
トム・クルーズ 写真:John Shearer/Getty Images for Warner Bros. Pictures
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トム・クルーズとアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督が初めてタッグを組んだ『DIGGER/ディガー』の米レビューが到着した。本作は、気候危機というシリアスな題材を、壮大なスケールとブラックユーモアで描く異色のダークコメディだ。

トム・クルーズが演じるのは、莫大な財産と権力を持つ石油王ディガー・ロックウェル。自らが引き起こしてしまった環境災害を前に、世界を救おうと奔走する一方、その危機をどう世論に伝え、どう自分の責任から逃れるのかにも頭を巡らせる。

気候危機、政治、メディア、そして人々が物語をどう受け止めるのか――。イニャリトゥ監督らしい大胆な発想と、トム・クルーズの振り切った演技が融合した、スケールの大きな作品に仕上がっている。

『DIGGER/ディガー』、トム・クルーズが傲慢な石油王に

トム・クルーズが演じるディガー・ロックウェルは、世界でも指折りの権力を持つ石油王だ。カウボーイハットやボロタイを身につけ、巨大な邸宅で暮らす彼は、何事にも自信満々。自分の判断こそが正しいと信じて疑わない人物として登場する。

そんなディガーを突然、巨大な環境危機が襲う。

グリーンランドの石油採掘施設で異変が発生し、氷に亀裂が生じる。やがて巨大な氷の塊が分離し、ヨーロッパへ向かって移動を始める。衝突すれば大規模な災害につながる可能性があり、世界は未曾有の危機に直面する。

しかも、その原因をたどれば、ディガー自身が進めてきた石油採掘に行き着く。

それでも彼は、ただ責任を認めるだけの人物ではない。自分が世界を救う存在であることを証明しようと奔走し、危機を前にしても「どうすれば自分にとって最も有利な状況を作れるか」を考え続ける。

「人類を救う英雄」と「危機を生み出した張本人」という相反する顔を持つディガー。この矛盾こそが、本作のユーモアと皮肉を生み出している。

気候危機を大胆に風刺

『DIGGER/ディガー』がユニークなのは、気候変動という非常に深刻なテーマを、真正面からシリアスに描くのではなく、極端なキャラクターと状況を使って風刺している点だ。

ディガーのもとには、ジョン・グッドマン演じるコンプソン大統領ら政府関係者が集まり、迫り来る危機への対応を話し合う。

しかし、そこでも議論の中心になるのは、純粋に「どうすれば人々を救えるのか」という問題だけではない。

誰が責任を取るのか。世間には何を伝えるのか。そして、どんな「物語」を作れば人々を納得させられるのか。

危機そのものと同時に、「危機をどう語るか」が重要になっていく。

この視点が、『DIGGER/ディガー』を単なる環境災害映画とは違う作品にしている。

トム・クルーズの振り切った演技が楽しい

本作で特に目を引くのが、トム・クルーズの演技だ。

これまで数々の大作で身体を張ったアクションを見せてきたクルーズだが、『Digger』ではそのスター性を別の方向へと解放している。

ディガーは、声を張り上げ、周囲に指示を飛ばし、自信満々に自らの正しさを語る。カウボーイブーツやテンガロンハット、ボロタイという装いも相まって、現実離れしたほど大げさなキャラクターとして映る。

しかし、その誇張された人物像が、本作の風刺性とよく噛み合っている。

特に印象的なのが、ディガーが国際社会に向けて演説する場面だ。

石油に依存してきたのは自分だけではない――。

そんな理屈を堂々と突きつけながら、世界の矛盾を逆に問い返していく。自ら環境危機を引き起こした人物でありながら、同時に「石油なしで現代社会は成り立つのか」という問題を突きつけるところに、ディガーというキャラクターの面白さがある。

そしてクルーズは、ディガーの大げさな言動だけでなく、物語が進むにつれて別の表情も見せていく。

派手な演技の奥にある、より人間的な部分が顔を出すことで、キャラクターに意外な奥行きが生まれている。

リズ・アーメッドら豪華キャストが集結

本作には、トム・クルーズを取り囲むように実力派俳優が集結している。

リズ・アーメッドは、ディガーに現実を突きつける科学者ガネシュを演じる。危機の深刻さを理解しながらも、周囲の権力者たちに事実を伝えようとする人物だ。

ジョン・グッドマンはコンプソン大統領、サンドラ・ヒュラーはディガーの妹エマ、マイケル・スタールバーグは副大統領、ジェシー・プレモンスはケニー、エマ・ダーシーはディガーのアシスタント、リナを演じている。

それぞれ個性的なキャラクターが配置されているが、物語の中心にいるのはあくまでディガー。

だからこそ、豪華キャストを相手にトム・クルーズがどこまでキャラクターを膨らませるのかにも注目したい。

『DIGGER/ディガー』を彩るイニャリトゥらしい壮大な映像

『DIGGER/ディガー』の魅力は、物語やキャラクターだけではない。

撮影監督を務めるのは、イニャリトゥ監督と『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『レヴェナント:蘇えりし者』でもタッグを組んだエマニュエル・ルベツキ。

さらに本作はVistaVisionで全編撮影されており、巨大なスクリーンで見ることを意識したスケール感のある映像が展開する。

そこに、プロダクションデザイナーのデニス・ガスナーらによる大がかりな美術が加わる。

ディガーの豪邸をはじめ、政府関係者が集まる空間、そして巨大な氷の世界まで、どの場面も現実そのものというより、少しだけ現実からズレたような感覚を持っている。

その過剰さが、作品の風刺性をさらに強めている。

『DIGGER/ディガー』が描く気候危機と「物語」の力

本作が興味深いのは、単純に「石油は悪い」「環境を守るべきだ」というメッセージだけで終わらないところだ。

人々は危機そのものだけでなく、その危機について語られる「物語」によって現実を理解する。

誰が悪いのか。誰を信じるのか。誰が世界を救うのか。

そうした問いが、ディガーを中心に次々と浮かび上がってくる。

そして物語が進むにつれ、『DIGGER/ディガー』そのものについても新たな見方を促されるような展開が待っている。

そのため、作品後半についてはできるだけ情報を入れずに観るのがおすすめだ。

イニャリトゥ監督は、2014年の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でも、映画や演劇そのものを題材にしながら、現実と虚構の境界を揺さぶった。

『DIGGER/ディガー』でも、その「物語をどう見せるのか」という意識が随所に感じられる。

『DIGGER/ディガー』は、あえて「大きく」描く映画

『DIGGER/ディガー』は、気候危機という巨大な問題を、同じくらい巨大なスケールで描こうとする作品だ。

トム・クルーズ演じる石油王は極端で、政治家たちのやり取りも大げさ。映像も美術も壮大で、ユーモアもかなり大胆だ。

そのため、繊細なリアリズムを期待すると、少し違った印象を受けるかもしれない。

しかし、そもそもイニャリトゥ監督は、物事を小さくまとめるタイプの映画作家ではない。

『バードマン』では演劇と人生を、『レヴェナント:蘇えりし者』では極限状態に置かれた人間を、圧倒的な映像スケールで描いてきた。

『DIGGER/ディガー』もまた、その延長線上にある。

気候危機という現代的な問題を、風刺、ブラックコメディ、社会ドラマ、そして大作映画としてのスペクタクルを組み合わせて描く。

その「大きさ」こそが本作の個性だ。

作品冒頭に流れるIMAXのカウントダウンには、「映画を観るか、その一部になるか」というメッセージが表示される。

まさに『DIGGER/ディガー』は、観客を静かに傍観させるのではなく、その過剰な世界へと巻き込もうとする映画なのだ。

トム・クルーズとイニャリトゥという異色の組み合わせから生まれた『DIGGER/ディガー』。

気候危機という重いテーマを、これほど大げさで、奇抜で、スター映画らしいエンターテインメントへと変換した作品は、そう多くない。

その大胆さと振り切った演出こそ、本作を劇場で体験する面白さのひとつだろう。

『DIGGER/ディガー』は10月9日(金)より全国の劇場で公開される。

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