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ドラマ版『キャリー』レビュー|「いじめられた少女の復讐」だけではない マイク・フラナガンが描くSNS時代の恐怖

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ドラマ版『キャリー』レビュー|「いじめられた少女の復讐」だけではない マイク・フラナガンが描くSNS時代の恐怖
『キャリー』写真:© Amazon MGM Studios
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『IT/イット』などで知られる“モダンホラーの帝王”スティーヴン・キングの代表作『キャリー』。1974年に発表された原作小説は、1976年にブライアン・デ・パルマ監督によって映画化され、いまなお多くの人に語り継がれている。そんな名作が、映画公開50周年を迎える今年、マイク・フラナガンによる全8話のドラマシリーズとして新たによみがえる。Prime Videoで10月7日から配信される本作は、スマートフォンやSNSが当たり前になった現代の高校生活を背景に描いている。

もちろん、これまでの『キャリー』を知る人なら、いじめ、母親マーガレット、そしてキャリーの超能力というおなじみの要素を思い浮かべるだろう。しかし、今回のシリーズは単なるリメイクではない。印象的なのは、「もしキャリーが現代の高校生だったら?」という発想だけでなく、そもそもキャリー・ホワイトという少女を、これまでとは違う視点で描いているところだ。

『キャリー』OFFICIAL本予告

今までの『キャリー』とは違う、好奇心に満ちた少女

キャリー(演:サマー・H・ハウエル)は、母マーガレット(演:サマンサ・スローヤン)とともに外界から隔絶されたような生活を送ってきた。父親の突然の死をきっかけに、キャリーは公立高校という、それまで知らなかった世界へ足を踏み入れる。学校で周囲になじめず、クラスメイトから孤立するキャリー。特に、人気者のクリス・ハーゲンセン(演:アリソン・ソーントン)を中心とした女子生徒たちからは、日常的に嫌がらせを受けている。一方、スー・スネル(演:シエナ・アグドン)はキャリーへの態度を改めようとする生徒のひとり。こうした人間関係が、キャリーの学校生活を大きく左右していく。

ここで面白いのが、マイク・フラナガンが意識的に「新しいキャリー」を描いていることだ。フラナガンによれば、これまでの映像化作品では、すでにトラウマを抱え、外の世界に強い恐怖を感じているキャリーが描かれてきた。一方、今回のキャリーは、まだ何も知らないからこそ、外の世界に強い好奇心を抱いている。

聖書しか知らなかった彼女は、隣人との交流をきっかけに、世の中にはさまざまな本があることを知る。学校ではカウンセラーに勧められて図書館へ足を運び、パーティーにも興味を示す。そして、人に対しても驚くほど素直で親切だ。

誰もが「新入生」の頃に抱いていたような、何もかもが新鮮に見える初々しさを、キャリーも持っている。そんな彼女が少しずつ現代のティーンエージャーが直面する現実に触れていくことで、これまでとは違ったキャリーの姿が見えてくる。

『キャリー』より
『キャリー』より 写真:© Amazon Content Services LLC

SNS時代の「いじめ」は、学校を出ても終わらない

1970年代を舞台にした原作や1976年の映画版と、今回のシリーズを大きく隔てるのがSNSだ。学校で起きた出来事がスマートフォンで撮影され、オンライン上で拡散される。いじめは教室の中だけで完結せず、画面を通してコミュニティ全体へ広がっていく。本作は、SNS時代の「何気ない残酷さ」が物語の大きな要素となっている。

『キャリー』より
『キャリー』より 写真:© Amazon Content Services LLC

さらに、キャリーのクラスメイトであるクリス・ハーゲンセンについても、今回のシリーズでは単純な「意地悪な女子高生」として描いていない点が興味深い。マイク・フラナガンによるショーランナー・ノートでは、原作やこれまでの映像化作品で、マーガレットとクリスが「救いようのない怪物」として描かれてきたことに触れたうえで、2人を別の角度から捉え直したことが説明されている。

マーガレットは、単なる狂信的で虐待的な母親としてではなく、娘を心から愛し、世の中の残酷さから守りたいと願いながらも、その方法を見誤ってしまう女性として描かれている。

クリスの残酷な行動も、単に「意地悪だから」の一言では片づけられない。彼女自身もまた、心の奥に痛みを抱えているからこそ、間違った形でキャリーにぶつかってしまう。その姿を見ていると、いじめる側といじめられる側を、単純に「悪い人」と「かわいそうな人」という二項対立だけで捉えることの難しさを感じさせる。

『キャリー』より
『キャリー』より 写真:© Amazon Content Services LLC

もちろん、キャリーとクリスでは置かれている状況も、周囲から向けられる視線もまったく違う。それでも2人とも、自分の世界の中でどうにか生きようとしている少女たちだ。そう考えると、『キャリー』は単なる「いじめられた少女の復讐劇」ではなく、なぜ人は誰かを傷つけてしまうのか、その裏側にあるものまで描こうとしている作品なのだと感じる。

衣装にもキャラクターの世界が表れる

『キャリー』より
『キャリー』より 写真:© Amazon Content Services LLC

筆者がぜひ注目してほしいのが衣装だ。キャリーは自分で服を作り、それを着て学校へ通っている。今回、衣装デザインを担当したのはタミー・ジョー(Tammy Joe)だ。

キャリーの服装には、彼女がどんな環境で育ってきたのかが表れている。一方で、学校で目にする生徒たちの服装は、キャリーにとって初めて知る世界の象徴でもある。そんな違いに注目してみると、キャリーが少しずつ新しい世界に触れていく様子が、より分かりやすく見えてくる。

「血」と「恐怖」から、「ソーシャルメディアの恐怖」へ

『キャリー』より
『キャリー』より 写真:© Amazon Content Services LLC

Prime Videoシリーズ『キャリー』では、スティーヴン・キング自身が製作総指揮として名を連ねている。キングはマイク・フラナガンによる今回のシリーズについて、「原作とブライアン・デ・パルマの映画が“血”と“恐怖”を描いたものだとすれば、フラナガン版はそこをさらに深く掘り下げ、“ソーシャルメディアの恐怖”を描いている。私はとても気に入った」と語っている。

フラナガンは、「私たちが生きる現代社会では、優しさ、残酷さ、共感、そして暴力について、これまで以上に率直かつ直接的に語り合う必要があります」と語ったうえで、今回の『キャリー』は単なるホラーではなく、ある種の「悲劇」を描いた物語だと説明している。

「もし誰かにもう少し優しくしていたら、何かが変わっていたのではないか」――。そんな問いを、観終わった後にも残すシリーズだ。

Prime Originalドラマ『キャリー』 作品概要

『キャリー』
『キャリー』写真:© Amazon MGM Studios

タイトル:『キャリー』
配信日:Prime Videoにて2026年10月7日(水)より独占配信開始
話数:全8話 ※一挙配信
作品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B0H8R8XVTL
ショーランナー:マイク・フラナガン
製作総指揮:マイク・フラナガン、スティーヴン・キング
出演:サマー・H・ハウエル、サマンサ・スローヤン、シエナ・アグドン、アリソン・ソーントン、ジョエル・ウレット、ジョシー・トター、アーサー・コンティ、タリア・デュデック、アンバー・ミッドサンダー、マシュー・リラード

※配信内容・スケジュールは予告なく変更になる場合がございます。
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