カンヌ国際映画祭2026開幕会見|デミ・ムーアとパク・チャヌクが語る“政治と映画表現”
第79回カンヌ国際映画祭が開幕し、審査員を務めるデミ・ムーアとコンペティション部門審査委員長のパク・チャヌクが、映画における政治的表現や創作の自由について見解を示した。開幕直後の記者会見では、映画と社会性の関係をめぐる議論が中心となった。
カンヌ映画祭開幕2026、会見で語られた政治と映画表現
デミ・ムーアは、映画表現における自己検閲の危険性について言及し、「創作の本質は表現にある。もし自らを検閲し始めれば、創造性の核心を失うことになる」と述べた。その上で、芸術を通じて真実や答えに到達できる可能性を強調し、表現の自由を重視する姿勢を示した。
一方、パク・チャヌクは政治と芸術の分離について疑問を呈し、「政治と芸術を対立させる考え方自体が不自然だ」と指摘。政治的メッセージを持つ作品を排除すべきではない一方で、政治性のない映画も軽視されるべきではないとバランスの重要性を語った。
また、強い政治的主張であっても表現が不十分であれば「プロパガンダに変わり得る」とも述べ、映画としての完成度の重要性にも触れた。
AI時代の映画制作とクリエイティブの行方
会見では人工知能(AI)についての議論も行われた。ムーアはAIの台頭について、「対立するのではなく共存の道を探るべきだ」としつつも、現状では十分な対策が整っているとは言い切れないとの認識を示した。
その一方で、芸術の本質は技術ではなく「魂や精神にある」と述べ、AIが創作の本質を置き換えることはできないとの考えを示している。
また、審査員のポール・ラヴァーティはAI技術の集中管理に警鐘を鳴らし、大手テック企業や富裕層によるアルゴリズム支配の問題を指摘。労働や社会構造への影響、環境負荷など多面的な課題を挙げ、透明性と民主的な管理の必要性を訴えた。
ベルリン国際映画祭の議論を背景に高まる関心
今回の議論は、政治的対立が波紋を広げた今年2月のベルリン国際映画祭を背景にしている。同映画祭では審査委員長のヴィム・ヴェンダースが「映画は政治から距離を置くべきだ」と発言したことが議論を呼び、関係者から批判の声が相次いだ経緯がある。
その後、80人以上の映画関係者が公開書簡を発表するなど、映画祭における政治的発言のあり方が国際的な論点となっていた。
カンヌ映画祭審査員と今後の行方
今年のカンヌ映画祭審査員には、クロエ・ジャオやステラン・スカルスガルド、ルース・ネッガら映画界の多彩な顔ぶれが名を連ねている。コンペティション部門22作品の中から選ばれる最高賞パルムドールは、5月23日の授賞式で発表される予定だ。
開幕作品にはピエール・サルヴァドリ監督による『La Vénus électrique(原題)』が選ばれ、華やかな幕開けとなった。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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