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映画『フュリオサ』から『デューン 砂の惑星』へ──アニャ・テイラー=ジョイが駆け抜けるキャリアの現在地

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映画『フュリオサ』から『デューン 砂の惑星』へ──アニャ・テイラー=ジョイが駆け抜けるキャリアの現在地
アニャ・テイラー=ジョイ 写真:Myles Hendrik; Hair: Gregory Russell; Makeup: Georgie Eisdell; Nails: Kim Truong; Fashion Assistant: Marley Pearson; Anya Taylor-Joy wears Dior Addict Lip Glass on cover and throughout.
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野生児として育ったアルゼンチンでの幼少期、ロンドンでのいじめ、そして映画『ウィッチ』での衝撃的なデビュー。アニャ・テイラー=ジョイが歩んできた異色のキャリアと、『マッドマックス:フュリオサ』撮影中にジョージ・ミラー監督と繰り返した交渉の内幕を語った。

アニャ・テイラー=ジョイ、映画『フュリオサ』の挑戦

オーストラリアで行われた『マッドマックス:フュリオサ』の撮影現場で、ジョージ・ミラー監督がアニャ・テイラー=ジョイに毎日伝えていたことがある。呼吸をするな、口を閉じろ、感情を見せるな。アイコンというものは、些細な動きを見せないものだという監督の確固たる信念に基づく指示だった。

29歳のテイラー=ジョイは、多くのことができる俳優だ。しかし、じっとしていることだけは苦手だという。

最新作『ラッキー(原題:Lucky)』は、Apple TVで7月15日に配信が始まる全7話のクライムスリラーで、彼女はほぼ全編にわたって走り続ける役を演じている。彼女自身のキャリアの中でも、もっとも個人的な意味を持つ作品になったという。

西ハリウッドのレストランのテラスで、ベリーを食べながら当時の演出について振り返る彼女の様子には、すでに困難を乗り越えた人特有の落ち着きとユーモアがあった。

ロサンゼルス市内の看板では、ディオールやティファニーの顔として登場する彼女だが、実際に対面すると親しみやすい雰囲気をまとっている。ただ、ある瞬間に表情が切り替わると、『クイーンズ・ギャンビット』のベス・ハーモンや、『マッドマックス:フュリオサ』、そして『ウィッチ』で不気味な山羊と心を通わせた少女の面影がよみがえる。

アニャ・テイラー=ジョイ
アニャ・テイラー=ジョイ 写真:Myles Hendrik

プロデューサーとしての一面が垣間見える新作『ラッキー』

今年のテイラー=ジョイは、3つの大型プロジェクトを抱えている。プロデューサーとしても名を連ねる『ラッキー』、デニス・ヴィルヌーヴ監督による『デューン 砂の惑星』三部作の完結編、そして中つ国を舞台にした新作だ。『ラッキー』は小規模で個人的な作品である一方、残り2作は世界最大級のフランチャイズとなる。

『ラッキー』を製作するリース・ウィザースプーンのHello Sunshineは、原作となるマリッサ・ステイプリーの小説の映像化権を取得した当初から、主演候補をテイラー=ジョイ一人に絞っていたという。ウィザースプーンはメールでの取材に対し、原作を最初に共有した相手も彼女だったと振り返り、「生まれながらのプロデューサー」であり、キャラクターに深く共鳴する人物だと評した。

テイラー=ジョイ自身も、詐欺師である主人公ラッキー・アームストロングについて、「じっとしていられない人物」であり、自分自身も「動くことが好きな人間」だと語り、共演前から役との親和性を感じていたという。

アルゼンチンでの幼少期とロンドンへの移住

テイラー=ジョイは、父親の仕事の都合で米マイアミに生まれたが、育ったのはアルゼンチンのブエノスアイレスだった。6人兄弟の末っ子で、年齢差は最大40歳近く離れている。動物が好きで、卵を集めて孵化させたり、ひなに水泳を教えたりするなど、自然の中で過ごす時間が多かったという。投資銀行家だった父親は40歳で引退後、世界選手権に出場するパワーボートレーサーに転身し、テイラー=ジョイ自身も同乗していた。母親は心理学者だった。

2002年、アルゼンチンの政治的混乱を理由に、父親は家族でロンドンに移住することを決断した。当時6歳半だったテイラー=ジョイは英語を一切話せず、慣れ親しんだ環境すべてを失うことになった。

ロンドンでの生活は大きな衝撃だったという。転校初日、アルゼンチン式の挨拶として同級生の頬にキスをしたところ、それが原因で同性愛者だとみなされ、孤立してしまったと振り返る。その後に受けたいじめでは、容姿について否定的な言葉を繰り返しかけられたという。

そうした状況の中、彼女は『ハリー・ポッター』シリーズを繰り返し読むことで英語を習得していった。8歳の頃には、欲しいものリストに「子犬」と並んで「エージェント」と書いていたと、母親は振り返る。当時から「ハリウッドで活躍するための道」をインターネットで調べていたが、得られる答えはいつも「運とタイミング」というものだった。

アニャ・テイラー=ジョイ
アニャ・テイラー=ジョイ 写真:Myles Hendrik

モデルスカウトから女優デビューまで

転機が訪れたのは16歳のとき。初めてハイヒールを履いて犬の散歩をしていたところ、1台の車が並走してきた。車内にいたのは、モデル事務所Stormの代表サラ・ドゥーカスだった。テイラー=ジョイは「モデルには興味がないが、モデルから女優になる人がいると聞いている。それが自分のやりたいことだ」と即座に伝えたという。

その後、オーディションを重ねる中で出会った脚本が、ロバート・エガース監督の『ウィッチ』だった。脚本に書かれていた役柄の人物描写は「平凡な顔立ち」とされていたが、テイラー=ジョイ自身はそれに当てはまらないと感じていたという。

低予算・極寒のカナダでの撮影だったが、オーディションでエガース監督から「もう一度会いたい」と言われ、役を獲得した。同時期に提示されていたディズニーチャンネルの出演オファーは辞退したという。撮影現場に入ると、脚本の人物描写が「平凡な顔立ち」から「印象的な大きな目を持つ」に変更されていたことに気づき、深く心を動かされたと振り返る。

エガース監督は、当初想定していた人物像とは違っていたものの、テイラー=ジョイが脚本のセリフを自分の意図した通りに表現できる唯一の人物だったと評価している。

低予算製作だったため、出演者やスタッフが部署を超えて作業を手伝う必要があったという。物語の中核を担う山羊「ブラック・フィリップ」は実際に気性が荒く、共演者にケガを負わせたこともあったが、ベジタリアンのテイラー=ジョイ自身は山羊と良好な関係を築いていたと語る。

『ウィッチ』は400万ドルの製作費に対し4,000万ドルの興行収入を記録し、テイラー=ジョイの名を業界に知らしめた。その後は『スプリット』『ミスター・ガラス』『サラブレッド』などに出演したが、ブレイクまでにはさらに5年を要した。

『クイーンズ・ギャンビット』での飛躍

転機となったのは、脚本家スコット・フランクからの連絡だった。ウォルター・テヴィスの1983年の小説を原作とする、チェスの天才少女を描いた作品の映像化が長年実現していなかったという。テイラー=ジョイは打ち合わせ前のわずかな時間で原作を読み、「チェスの話ではない」「ベス・ハーモンは赤毛でなければならない」という2点を主張したと振り返る。

周囲からは、チェスを題材にした作品の成功を疑問視する声もあったが、テイラー=ジョイ自身はベス・ハーモンという人物像にすでに馴染みがあったと語る。2020年10月に配信が始まった『クイーンズ・ギャンビット』は、Netflixの歴代視聴数の中でも上位に入る作品となった。

『マッドマックス:フュリオサ』撮影中のジョージ・ミラー監督との交渉

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を映画館で観た際、テイラー=ジョイは立ち上がって歓声を上げたという。フェミニストアイコンとしてこのシリーズに出演することは、長年の夢だったと振り返る。一方、製作費1億7,000万ドルの本作で、ミラー監督が求めたのは正反対の表現だった。クリント・イーストウッドのマカロニ・ウェスタンを思わせる静止した演技を求められ、常に動き続けることを得意とするテイラー=ジョイにとっては大きな挑戦になったという。

撮影期間中、彼女は毎日のようにミラー監督と交渉を重ねた。クリス・ヘムズワース演じるデメンタスへの最終的な決着について、フュリオサ自身が決断を下す結末にすべきだと主張し続けたという。最終的に完成した映画では、フュリオサがデメンタスを捕らえ、幼少期から持ち続けていた桃の種を彼の体に植え、それが木となり実を結ぶという結末が描かれている。

ミラー監督との関係についてテイラー=ジョイは多くを語らないとしながらも、当時の主張が「ハードに勝ち取ったもの」だったと振り返っている。

アニャ・テイラー=ジョイ
アニャ・テイラー=ジョイ 写真:Myles Hendrik

『デューン 砂の惑星』参加への執念

デニス・ヴィルヌーヴ監督作品『メッセージ』は、テイラー=ジョイにとって特別な作品だという。2022年のパーティーでヴィルヌーヴ監督と出会った際、『デューン 砂の惑星PART2』のために役を用意していたが、『フュリオサ』とスケジュールが重なり出演できないと告げられた。

それでもテイラー=ジョイは、エージェントに何度も状況を確認し続けたという。「終わっていない」という確信があったと振り返る。『フュリオサ』のクランクアップ後、ヴィルヌーヴ監督から、アブダビとナミビアを経由して1日だけの撮影に参加してほしいという連絡があり、内容を聞く前に出演を即決したという。

母親を伴って参加した撮影は、わずか10人のスタッフによる砂漠での1日限りの撮影だったといい、自身にとってもっとも印象的な映画製作の経験だったと語る。演じたアリア・アトレイデスは、世界初公開の直前まで出演自体が伏せられていたという。

アニャ・テイラー=ジョイ
アニャ・テイラー=ジョイ 写真:Myles Hendrik

『ラッキー』での過酷な撮影と中つ国への参加

『ラッキー』では、全7話を通してほぼ走り続ける役を演じている。演出面では、運動能力の高さよりも「不慣れな様子」を表現することが求められたという。撮影開始前の1ヶ月で運動を再開した程度だったといい、銃声による聴力への影響にも言及しているが、本人は気にしていない様子だという。

製作のリース・ウィザースプーンについては、自身のビジョンに対して妥協しない一方で、常に丁寧な対応をする人物だと評している。

テイラー=ジョイは現在、ロンドンとロサンゼルスを拠点としている。ロサンゼルス在住は、バンド「Searcher」のメンバーである夫マルコム・マクレイの仕事の都合によるものだという。

さらに、アンディ・サーキス監督作『ロード・オブ・ザ・リング:ザ・ハント・フォー・ゴラム(原題: Lord of the Rings: The Hunt for Gollum)』では新たなエルフ役での出演が決定している。ピーター・ジャクソン監督による『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズへの思いを語り、中つ国への参加を楽しみにしているという。なお、ジョニ・ミッチェルの伝記映画に関する噂については、肯定も否定もしていない。

少女時代、女優になる方法をインターネットで検索し続けていたテイラー=ジョイ。現在の彼女からは、当時のような「運とタイミング」に委ねる姿勢はうかがえない。ジョージ・ミラー監督と半年間にわたって交渉を重ね、『デューン』参加を信じて疑わなかった姿勢からも、自らの意思でキャリアを切り開いてきたことがわかる。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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