「子どもの声をAIに渡さないで」『ペッパピッグ』AI契約問題に1000人超が抗議 ハズブロが声明
世界的人気アニメ『ペッパピッグ』を巡り、子役の声を生成AIで利用できる契約内容が波紋を広げている。1000人を超える俳優やエージェントが抗議し、「子どもの声をAIに渡さないで」と業界へ訴えた。
英国の児童俳優専門エージェント団体「Agents of Young Performers Association(AYPA)」は、人気アニメ『ペッパピッグ』に関わる契約で、子どもの声をAIで利用できる条項が盛り込まれているとして公開書簡を発表。1000人を超える俳優や代理人が署名し、契約内容の見直しを求めている。
一方、『ペッパピッグ』の権利を持つハズブロは、作品名を否定することなく「子どもの出演者の保護は、ハズブロにとって最も重要な価値観の一つである」とコメントしている。
『ペッパピッグ』AI契約問題とは? 子どもの声を生成AIで利用する契約に批判
AYPAによると、問題となっているのは、子どもの出演者に提示された契約書に含まれる生成AIに関する条項だ。
公開書簡では、国際的人気を誇る長寿アニメシリーズを制作する大手スタジオが、子役に対しAIによる音声利用への同意を求めていると指摘。米Deadlineは、この作品が『ペッパピッグ』であると報じている。
契約では、AI利用に同意すると、子どもの声をフランチャイズ内のさまざまな商業コンテンツで利用できる内容になっているという。
AYPAは、この条項の削除を求めたものの、「受け入れるか辞退するか」という姿勢だったとして問題視している。
「子どもの声をAIに渡さないで」1000人超が署名
公開書簡には1000人を超える俳優・エージェントが署名。英国の児童俳優業界全体へ波紋が広がっている。
団体は「子どもは十分な法的同意を与えられない。親や保護者の承認を、子どもの声を収集・複製・学習・再利用する包括的な許可として扱うべきではない」と訴えている。
さらに、幼い頃に結んだ契約が、本人が十分に理解できないまま将来の俳優人生を左右する可能性があると懸念を示した。
AYPAは、未成年者との契約に生成AI利用条項を盛り込むこと自体に反対している。
ハズブロ「子どもの出演者の保護が最優先」
『ペッパピッグ』の権利を保有するハズブロは声明で、個別の契約交渉についてはコメントを控えた。
一方で、「子どもの出演者の保護は、ハズブロの企業理念の根幹です。AIを巡る業界基準が変化する中、この問題に責任と透明性を持って取り組みます」と説明した。
声明では、『ペッパピッグ』が問題となっている作品であることについて否定していない。
『ペッパピッグ』『トランスフォーマー』だけじゃない ハズブロが持つ巨大IPとは
玩具・エンターテインメント大手ハズブロは、『ペッパピッグ』だけでなく、数多くの人気IP(知的財産)を展開している。
代表作には、映画シリーズとして世界的ヒットを記録した『トランスフォーマー』や『G.I.ジョー』のほか、ファンタジー映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』などがある。
さらに、人気玩具シリーズを原作とした実写映画『マスターズ・オブ・ユニバース』の公開も今月始まったばかり。映像事業への投資を積極的に進めている。
そのほかにも、「マイリトルポニー」「モノポリー」「マジック:ザ・ギャザリング」など、世界的に知られるブランドを数多く保有しており、テレビ、映画、ゲームなど幅広いメディアへ展開している。
今回問題となっているAI条項は、『ペッパピッグ』に限らず、こうした大型IPを展開するエンターテインメント業界全体の課題として注目を集めている。
『ペッパピッグ』だけでは終わらない――AI契約はエンタメ業界全体へ広がる可能性
今回の問題は『ペッパピッグ』だけにとどまらない。AYPAは、未成年の声をAIへ利用する契約が業界全体へ広がる可能性があるとして警鐘を鳴らしている。
英国では10歳未満の子役は俳優組合「Equity」に加入できず、多くの場合、保護者が契約を結ぶ。
そのため、生成AIに関する条項も本人ではなく保護者が判断することになり、子ども自身が十分に理解しないまま将来に影響する契約を結ぶ恐れがあるという。
団体は、「これは未成年者とのAI契約全体に関わる問題だ」と強調し、業界全体へ契約内容の見直しを求めている。
公開書簡は最後に、「私たちは、子どもの声の権利を無期限かつ無制限に手放すことを求める契約を拒否します」と締めくくっている。
海外でもAIと声優を巡る議論が加速
生成AIによる音声利用を巡っては、近年ハリウッドでも俳優や声優が権利保護を求める動きが相次いでいる。2023年のハリウッド俳優・脚本家ストライキでもAIの利用は大きな争点となり、近年は声優や俳優の権利保護を巡る議論が世界的に広がっている。
生成AIによる声の複製や無断利用を巡っては、映画・ゲーム・アニメ業界でも契約の見直しが進みつつあり、『ペッパピッグ』を巡る今回の問題は、その議論をさらに加速させる出来事となりそうだ。
『ペッパピッグ』を巡る今回の問題は、一作品の契約問題にとどまらず、AI時代に子どもの権利をどう守るべきかという、エンターテインメント業界全体の課題を浮き彫りにした。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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